2011 Fiscal Year Research-status Report
肉畜資源としての口之島野生化牛の高度利用に関する研究
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23780267
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
大島 一郎 鹿児島大学, 農学部, 助教 (60465466)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 口之島野生化牛 / 産肉性 / 骨格筋 / 筋線維 / 結合組織 |
Research Abstract |
本申請研究は、我が国の在来牛である口之島野生化牛(以下、野生化牛)を遺伝資源として利用することで放牧主体により生産された牛肉の高品質化が可能であるという仮説を検証する第一段階として、野生化牛と黒毛和種の間の交雑牛(以下、KJB)の慣行肥育における発育および肉質特性を検討することを目的としている。研究期間である3年間(H23~H25)において、まずKJBおよび対照となる黒毛和種の産仔を各3頭以上作出し、当牧場慣例の育成・肥育管理を行いながら(i)KJBの体重および体尺測定値の推移(ii)KJBの胸最長筋筋線維型および筋線維直径の推移(iii)KJBの胸最長筋における筋周膜ならびに筋内膜の厚さの推移(iv)屠殺後のKJB胸最長筋における筋線維型同定、筋線維直径計測および筋内コラーゲン構築の4点に関して検討する予定である。平成23年度前半に分娩予定であったKJBの流産が発生したため、供試牛獲得が大幅に遅れたものの、現在までに、KJB3頭(平成23年6月出生2頭、平成24年3月出生1頭)および黒毛和種2頭(平成23年8月出生2頭)の産仔を得ており、毎月の体重測定、体尺測定を行っている。平成23年中に得られていない供試牛(黒毛和種1頭)に関しては、平成24年度前半には確保する予定となっている。頭数不足により統計解析には至らないものの、KJBの体重曲線は野生化牛と黒毛和種の中間で推移し順調な発育を示している。現在、体尺測定から得られたデータをもとに各個体の体重に対する各部位の相対成長率を解析中である。また、6か月毎に行う予定である生研針による胸最長筋サンプル採取も生後6か月齢(KJB:12月、黒毛和種:2月)で第1回目を無事終了しており、現在、凍結切片作成および組織化学的染色を行いその特性を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本申請研究の平成23年度の研究計画では、年度中旬までにKJBおよび黒毛和種の産仔を各4頭得る予定であった。しかし、KJBの流産が発生したため、年度中旬までにKJBおよび黒毛和種を各2頭得るにとどまった。あらかじめ事故発生も予想し、必要頭数以上の種付けを行っていたため、年度後半の3月にはKJB1頭を得て、統計解析に必要なKJB3頭を確保することができた。KJBおよび黒毛和種の発育および骨格筋特性を比較する本申請研究では、両供試牛の雌雄差および育成・肥育時期をそろえる必要がある。通常、鹿児島大学農学部附属入来牧場(本申請研究実施場所)では、年間を通して黒毛和種の生産を行っているため、KJBの産仔に合わせて、雌雄および出生時期を黒毛和種で調整する予定としている。現在、平成23年度後半(3月)に得られたKJB1頭の対照として適合する黒毛和種の選定を行っている。年度中旬までに必要頭数の2/3の出生にとどまった点は、当初の研究計画から若干遅延している点である。平成23年度に得られた産仔に関しては、毎月の体重測定および体尺測定を予定通り行っており、遅延はない。また、6か月毎に行う予定である生研針による胸最長筋サンプル採取も生後6か月齢で第1回目を終了しており、現在、組織化学的特性を解析中である。この点に関しても遅延はないものと考えている。これらを総合すると、全体的な進捗状況は、流産発生による遅延によりやや遅れていると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、供試牛であるKJBの流産発生から、実験開始が若干遅延したものの、黒毛和種1頭を除く供試牛は確保できた。平成24年度は残りの1頭を早急に確保し、着実なデータ採取を継続する予定である。当初の研究計画では、KJBおよび黒毛和種の供試牛を短期間で得ることにより、各4頭ずつを群飼し、出荷まで行うことを想定していた。KJBの流産により、KJBおよび黒毛和種供試牛各4頭の中で約9か月の月齢差が生じたため、研究計画を変更し、供試牛を2つに区分し、平成23年度夏に出生した群(KJB2頭、黒毛和種2頭)をそれぞれ2頭飼いにより肥育し、平成23年度末から平成24年度初旬に出生した個体(KJB1頭、黒毛和種1頭)はそれぞれ1頭飼いにより肥育することとする予定である。この変更に伴う牛房の増加に関しては既に手配済みであるため、問題は発生しない。平成23年度に得られた体重測定値、体尺測定値および生後6か月齢における胸最長筋の組織化学的特性に関しては、早急にとりまとめ、平成24年10月に予定されている日本暖地畜産学会にて発表する予定としている。平成24年度は引き続き各種のデータ採取を継続し、得られたデータを平成25年3月に予定されている日本畜産学会において発表する予定である。また、両区3頭の供試牛が9か月齢に達し、データが揃った段階で、統計解析を行い、まず育成期までの比較データを国際誌に投稿予定としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、申請研究を立ち上げるための必要器具、備品、試薬の購入を行い、概ね当初の計画通りの研究費執行状況であった。また平成24年度分の研究費を前倒しし、必要とする機器、器具、試薬等を購入した。この前倒しに関しては計画段階で平成24年度に購入予定であった物品であるため、大幅な研究費使用計画の変更ではない。平成23年度のKJB流産により、供試牛からの材料筋採取頻度が増加したため、平成24年度以降の凍結切片作成、組織化学的染色等の実験作業をスムーズに進行するための緊急措置として前倒ししたものであり、これらの研究費執行に関しても、当初の予定と大差はない。この前倒しにより、平成24年度は実質研究費が0円となるが、実験遂行に伴う器具の破損、試薬の不足等に対応するため、平成25年度の研究費800000円の半額(400000円)を平成24年度に前倒しすることとした。平成23年度中にすでに必要備品、試薬等の大まかな部分は購入済みであるため、平成24年度の支出は、学会への出張費および器具試薬類の補充が主な計画となる。器具の破損、試薬の消耗度合によっては、平成24年度の研究費に残額が出た場合、平成25年度に繰り越しを行う予定である。
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