2011 Fiscal Year Research-status Report
放牧牛乳の脂質特性を利用した機能性乳製品とその風味に関する研究
Project/Area Number |
23780271
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
朝隈 貞樹 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター・酪農研究領域, 研究員 (50374773)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 牛乳 / 乳製品 / 放牧 / クリーム / 乳酸菌 / 脂肪酸 / 揮発性成分 |
Research Abstract |
放牧草を主体とした飼養方法で生産される牛乳(放牧牛乳)において、これまでの研究より脂質部分(クリーム)に明らかな特徴が認められている。本研究目的は、特徴的な脂質構成を有する放牧牛乳の原料としての魅力を最大限に活かした乳製品製造を行うため、とくに放牧牛乳由来クリーム(放牧牛乳クリーム)の付加価値化技術の開発に向け、放牧牛乳クリームの抽出・調整方法及びこれを利用した発酵試験により基礎的知見を得ることである。研究計画初年度となる本年度は、放牧牛乳クリームを目的となる濃度に調整するため、原料からの調整方法を検討した。さらに、抽出・調整したクリームを乳酸菌スターター(種菌)により発酵試験に供するため発酵条件の検討を行った。放牧牛乳10kgを45℃に加温しクリームセパレーター(エレクレムF1)を使用してクリームを抽出し、乳脂率はミルコスキャン法およびバブコック法の両測定法により確認した。抽出された放牧牛乳クリームの乳脂率を確認したところ、平均59.6%(ミルコスキャン法でも59.7%)で抽出可能であり、市販フレッシュクリーム(35-40%)と同等以上の濃度で抽出が可能であった。また、この条件で抽出された放牧牛乳クリームを40%に調整した後、90℃以上30分殺菌処理し、4℃12時間以上エイジングしたものを発酵条件の検討に用いた。発酵条件(スターター添加量および培養温度)の検討には、16%還元脱脂乳で前培養した乳酸菌バルクスターターA,B,C(いずれもクリスチャンハンセン社)を用いて24時間の発酵試験を行った。発酵クリームサンプルは、1,2,3,4,5,6及び24時間のものを採取した。本研究結果より、適度な発酵条件と考えられたスターターの添加量はクリームの2%であり、培養温度はAおよびB添加区は37℃、C添加区は32℃で培養24時間でのpHの持続的な低下が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の申請額に対して交付額が低かったため、試験遂行上必要となる機器の選定及び準備に時間を要した。しかし、遂行可能な試験から前倒しして進めているために順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
例数が少ないため、今年度も計画通り試験の再現性を確認する。また本研究結果より、放牧飼養を行うことで特徴的な脂肪酸が牛乳中に現れる可能性が考えられている。この脂肪酸は、一般的な標品にはない未同定のもので、構造も明らかではない。本年度は、試験により得られる種々のスターターを用いた発酵クリームサンプルにおける各種脂肪酸濃度の定量の他に、この未同定の脂肪酸の構造を明らかにする方針である。さらに、サンプルの揮発性成分(香り成分)の測定も開始し、発酵による風味の変化について検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、交付額が申請額を大きく下回ったため、従来申請していた内容で機器(圧力式ホモジナイザー)を購入することが難しくなった。このため、研究計画を大きく損なわない範囲で機器構成の変更を検討したため、購入が遅くなり昨年度の試験使用を延期し、残額(次年度使用額)475,918円が発生した。 次年度は、放牧牛乳クリームの発酵試験を継続するとともに、クリームの加工条件などを購入機器を使用することで変化させ試験を行う予定であり、このために本年度残額も使用する。また、脂肪酸、揮発性成分の分析に重点を置き結果を出す予定である。さらに、放牧飼養を行うことでクリーム中に現れる未同定の脂肪酸の構造決定を行うための研究費が必要となることが想定され、これにも用いる予定である。
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