2011 Fiscal Year Research-status Report
畜舎排水に含有するフミン質を利用した微生物燃料電池の開発
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23780272
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
山下 恭広 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所 畜産環境研究領域, 研究員 (60547719)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 畜舎排水 / フミン質 / 燃料電池 / 電気産生菌 / エネルギー |
Research Abstract |
畜産経営においては、資源循環型の経営を目指した家畜排せつ物由来エネルギーの回収・利用技術の開発が望まれている。微生物燃料電池は、微生物による有機物の酸化によって電気エネルギーを直接生産できるだけでなく、廃水の浄化にも寄与すると考えられることから、近年注目を浴びている。しかしながら、この微生物燃料電池の中心的役割を担う電気産生菌の群集生態や反応条件は解明されていないのが現状である。一方、畜舎排水は都市下水などの排水に比べフミン質を多く含有しており、このフミン質は多価陰イオン性のため、重金属などの無機正電荷イオンの溶解、輸送に重要な役割を果たしている。そこで、本研究では畜舎排水に含有するフミン質に着目し、フミン質の存在が微生物燃料電池の電子伝達に有利に働くか検証する。本年度は、試験に用いる微生物燃料電池の設計及び試作を行った。容積は負極槽、正極槽ともに500mLとし、全量が1リットルとなるような2槽式微生物燃料電池を用いることを想定し、電極には微生物の付着性が高いとされる炭素繊維を用いた構造として設計を行った。電極の形状によっては発電能力に大きく影響するものと考えられるため、平型及び球状型電極を用いて比較試験を行ったが、単純基質として酢酸を用いた短期間の試験では顕著な性能の違いは認められなかった。次年度以降は、電気産生菌の集積培養を試みるためにフミン質や酸化鉄等を用いた条件で試験を開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フミン質の存在が微生物燃料電池の電子伝達に有利に働くか検証するために、本年度は、2槽型微生物燃料電池の設計及び作製を行った。電極には炭素繊維を用いることで発電が可能な構造とした。試作した実験装置がうまく発電するか予備実験を行い、構造的に問題がないことを確認した。このことから、研究はおおむね順調に進展した。研究当初は、研究所内の浄化施設から活性汚泥を採取し、種菌として用いることを試みたが、発電能力が低かったため、他の種菌を用いて電気産生菌を培養する条件の検討を行い、次年度以降、集積培養を行う準備を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
フミン質等を添加した電気産生菌の培養によって、集積が可能であるか検討を行うとともに、試作した微生物燃料電池の性能評価を行う。具体的には、流入水基質に単純基質としてグルコースや酢酸を使用し、定期的に水質測定及び発電量の把握を行う。また、電圧をある値の間で往復させるサイクリックボルタンメトリー(電流-電位曲線の測定)によって、電子移動速度を予測し、本実験装置の反応機構の推定を行う予定である。試験が順調に進展すれば、負極槽に集積された生物膜を取り出し、16S rDNA に基づいた系統解析を行うことで、その群集の違いから、電子の受け渡しを行う電気産生に寄与する菌を同定する。電気産生に寄与する電気産生菌を特定した後、この細菌に特異的な16S rRNA 配列に基づいた蛍光プローブを用いてFISH 法を適用する。炭素繊維に付着した微生物をin situで可視化することによって存在形態を確認し、どの部位で電気産生菌が存在していたか明らかにする。上記の結果を基に実験装置を最適化し、効率的な発電を可能とする微生物燃料電池を開発し成果発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり、物品費、人件費・謝金、DNA シークエンス外部委託に使用する。なお、次年度使用額357,272円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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