2012 Fiscal Year Annual Research Report
乳酸菌による腸管神経・上皮間クロストーク調節の解明と消化管疾病予防への応用戦略
Project/Area Number |
23780274
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
遠野 雅徳 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所家畜飼養技術研究領域, 研究員 (50547718)
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Keywords | 乳酸菌 / プロバイオティクス / 消化管生理 / 腸管神経 |
Research Abstract |
【目的】本研究では、プロバイオティクス研究では未開拓な分野である「プロバイオティクスと腸管神経との相互作用」の追究を目指した。昨年度までに、乳酸菌成分刺激のための組織培養システムを構築し、新規腸管神経活性評価系を確立した。今年度は、乳酸菌成分による腸管神経刺激作用の詳細な作用メカニズムを追究した。 【成果】BALB/cマウスの近位及び遠位結腸における抗calcitonin gene-related peptide (CGRP)抗体を用いた免疫組織染色により、粘膜固有層及び筋層にCGRP陽性腸管神経の存在が認められ、一部の腸管神経末端は腸管上皮細胞近傍に存在していることが認められた。また、本組織におけるRT-PCR法による発現解析の結果、乳酸菌等の微生物細胞壁成分認識受容体の発現が認められた。以上のことから、腸管上皮細胞近傍まで延伸する腸管神経により、腸管上皮細胞活動が制御されていることが示唆され、腸管神経が生体内に取り込まれた後の乳酸菌成分等と相互作用することが考えられた。マウスの近位及び遠位結腸組織を用いた新規腸管神経活性評価系による解析の結果、細胞壁成分刺激後の短絡電流の上昇が認められたが、活性上昇後のテトロドトキシン後添加により消失したことから、細胞壁成分の腸管神経活性化作用が示唆された。すなわち、本短絡電の上昇は、上皮細胞のみの活性化ではなく、腸管神経を作用点とする”直接作用”であることが考えられた。一方で、組織培養後の培養液中の各種サイトカイン濃度の上昇が認められたことから、腸管免疫系を介した”間接作用”も存在することが示唆された。 【意義と重要性】腸管神経がプロバイオティクスの一作用点として機能し、生体調節作用を発揮する可能性が考えられた。今後、本研究により新規発見された乳酸菌の活用により、腸管神経を新たな作用点とする乳酸菌機能素材の開発に繋がることが期待される。
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Research Products
(3 results)