2012 Fiscal Year Research-status Report
筋肉部位間に香りの差をもたらす香気成分の特定と生成機構の解明
Project/Area Number |
23780276
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
大江 美香 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所・畜産物研究領域, 研究員 (90391383)
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Keywords | 筋肉 / 香気成分 / 部位 |
Research Abstract |
筋肉部位間で異なる香気成分の生成機構の解明のため、加熱後の食肉からの揮発性物質の抽出条件の検討を行った。揮発性物質の抽出は、固相マイクロ抽出(Solid phase micro extraction:SPME)ファイバーを用いた動的サンプリングで行った。最初にSPME法で使用するSPMEファイバーの抽出相の検討を行った。4種類のSPMEファイバー(「75 μm Carboxen/PDMS」, 「50/30μm DVB/CAR/PDMS」, 「85μm polyacrylate」, 「65μm PDMS/DVB」)を用いて検討を行い、抽出された揮発性物質数が最も多かった「65μm PDMS/DVB」をその後の解析に用いた。供試豚肉は、2種類の筋肉部位(中間広筋(モモ)および胸最長筋(ロース))とし、と畜7日目に枝肉より採取し、分析まで-30℃で凍結保存した。前処理は、調理法として「煮る」を想定し、真空包装下で90℃・30分の加熱を行った。抽出した揮発性物質に対し、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC/MS)を実施した。GC/MS分析の結果、約100ピークを検出し、標準物質の保持時間およびマススペクトルパターンとの比較により十数種の物質を同定した。同定した物質は両筋肉に存在し、1-pentanal, 1-hexanal, 1-heptanal, 1-octanal, 1-nonanalおよび 1-octen-3-olの合計量が、検出された揮発性物質の総量の50 %以上を占めていた。また、未同定物質の大部分についても、保持時間およびマススペクトルパターンから両筋肉に存在することを確認した。 これらより、揮発性物質の種類については筋肉間で大きな違いがないと考えられた。揮発性物質総量の80 %以上を占める47物質の量比を用いて主成分分析を行ったところ、筋肉で異なる傾向がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、食肉の各部位に特徴的な香気成分を特定すること、およびその香気成分の生成機構を解明することを目的として、異なる筋肉部位における加熱前の代謝関連物質のメタボローム解析と加熱後の揮発性物質の測定を行うこととしている。本年度は加熱後の揮発性物質の測定条件の検討を行い、その条件を用いて異なる筋肉部位における揮発性物質の測定を行ってきた。しかし、研究用ヘリウムガスの供給停止により揮発性物質の測定を一時中断せざるを得なかったため、必要なデータの収集が完了しておらず、研究がやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に検討した揮発性物質の測定条件を用いて、次年度は引き続き筋肉部位間での揮発性物質の差異を明らかにするための分析を継続し、必要なデータの収集を完了する。これらの揮発性物質の分析結果を基に、食肉の各部位に特徴的な香気成分を特定する。前年度に得た加熱前における代謝関連物質のメタボローム解析結果、および、今年度および次年度で得る予定である加熱後の揮発性物質の分析結果を基に、筋肉部位に特徴的な香気成分の生成機構の解明をする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額200,000円は、平成24年秋以降、国内での研究用ヘリウムガスの確保が困難となったことによる分析中断に対し、ヘリウムガスの供給が回復する平成25年3月以降に分析を再開するための経費であり、研究計画遂行のために使用する。
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