2011 Fiscal Year Research-status Report
炎症性腸疾患病態発症におけるインターロイキン-19による新規免疫調節機能の解明
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23780300
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
東 泰孝 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (50298816)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | IL-19 / T細胞 / 炎症性腸疾患 / サイトカイン |
Research Abstract |
平成23年度は、インターロイキン-19(IL-19)遺伝子欠損マウス(KO)を用いてハプテンである2,4,6-trinitrobenzene sulfonic acid(TNBS)を用いてT細胞を主体とするIBDモデルを作製し、炎症性腸疾患におけるIL-19の役割について検討を行った。野生型マウス(WT)およびIL-19KOにカテーテルを肛門から4 cm挿入した後、TNBS(2.5mg/100 L 50%エタノール)を直腸投与した。炎症性腸疾患モデルを作製した。投与後、体重を5日間測定した。投与3日後、遠位結腸を採材しヘマトキシリン・エオジン(HE)染色により炎症の程度を観察した。また、リンパ球の動態を観察するために、T細胞と形質細胞に対する免疫染色を行った。さらに、遠位結腸における各種サイトカイン発現量をリアルタイム定量PCRにより解析した。その結果、投与5日後までの体重を比較検討したところ、IL-19KOはWTよりも体重減少の程度が酷くなることが明らかとなった。HE染色像の観察によっても、IL-19KOはWTよりも上皮細胞の欠損および炎症性細胞の浸潤など、炎症の明らかな悪化が認められた。また、IL-19KOでは炎症性細胞浸潤が漿膜にまで達する激しい炎症反応であった。さらに、IL-19KOではIFN-gamma、IL-12、IL-22およびIL-33の発現量増加が認められた。以上の結果より、TNBSを用いてIBDモデルを作製し、IL-19遺伝子欠損に伴い、IBD病態が悪化することを見出した。本年度は、この病態悪化のメカニズムについて、詳細な検討を行ったところ、特に、T細胞が産生するIFNgammaの産生能がIL-19遺伝子欠損に伴い、増加することつきとめ、IL-19の免疫学的役割の一つにIFNgamma産生能の調節であることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では異なる三つの炎症性腸疾患モデルの解析を実施する予定であったが、本年度は、まず一つ目に検討したモデルにおいて、IL-19遺伝子欠損に伴う病態悪化を発見した。そこで、他の二つのモデルの実施を次年度にまわし、本年度は、この病態悪化のメカニズムについて詳細な検討を行った。このメカニズムの検討は、計画では次年度に行う予定であったものである。したがって、一部、本年度と次年度との計画を入れ替えて実施し、全体の研究計画としては、おおむね順調に目的を達成していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果を次年度早々には投稿する予定である。よりレベルの高い雑誌に投稿をすることで、追加実験などを求められれば、それに応えて追加実験を行うことで、研究成果のさらなる向上を目指せると考える。研究成果の拡がりやメカニズム追求の深さが増すことで、結果、より高い社会的貢献度達成を目指したい。次年度は、今年度とは異なるモデルの作製を実施し、IL-19の免疫学的役割のさらなる解明を期する。異なる作用メカニズム、異なる細胞タイプにより惹起されるモデルを用いることで、IL-19が影響を与える細胞タイプを特定することにもつながり、今後、IL-19の臨床応用を念頭に置いた場合、IL-19は1)バイオマーカーとして利用可能か、2)リコンビナントIL-19を投与することによって治療効果を発揮できるのか、3)IL-19の中和抗体を投与することによって治療効果を発揮できるのか、の各点について、基礎の研究成果を、出口をつねに意識しながら、臨床につなげたいと思う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、野生型マウスとIL-19遺伝子欠損マウスを用いて、以下に示す2種類の異なる炎症性腸疾患モデルを作製し、その病態変化の比較検討を行う。【オキサゾロンによる炎症性腸疾患モデル】ハプテンであるオキサゾロンを直腸投与し結腸に炎症を誘導する。投与後7日目まで、体重、便の固さ、および血便の有無を毎日モニタリングする。尚、本モデルはTh2反応が優勢な炎症でありヒト潰瘍性大腸炎に類似のモデルであると考えられている。【SCID移入による炎症性腸疾患モデル】野生型マウスとIL-19遺伝子欠損マウス脾臓よりCD45RBhi T細胞(ナイーブT細胞)を単離した後、SCIDマウスに移入する。野生型マウスでは3~5週後に大腸炎を発症する。本モデルは、エフェクターT細胞と制御性T細胞のバランス異常、すなわち、エフェクターT細胞の異常な活性化により腸炎が惹起される。また、本モデルはTNBS誘発性モデルと同様Th1型の反応を示すが、TNF-の寄与度が弱いことが特徴である。【組織学的観察】上記の各腸炎マウスより結腸を摘出した後、ヘマトキシリン・エオジン染色により、炎症性細胞の浸潤程度、上皮細胞の損傷の有無、潰瘍形成などを観察する。
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