2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23780303
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷部 理絵 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 講師 (70431335)
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Keywords | プリオン病 / 補体 / 初代培養神経細胞 |
Research Abstract |
プリオン病は致死性神経変性疾患であり、神経組織の空胞変性が特徴であるが、神経変性が起こるメカニズムは不明である。補体は自然免疫因子であり、病原体の排除に重要であるが、細胞を傷害する方向にも働きうる。本研究では、プリオン感染初代培養神経細胞に補体因子を反応させた場合に細胞変性・細胞死を誘導するかを解析し、プリオン病の病態における補体因子の役割を明らかにすることを目的とした。胎齢16日目のマウス胎仔の大脳皮質から神経細胞を培養し、プリオン Chandler 株または22L株を感染させた。プリオン感染17日後の神経細胞に補体を反応させると、6時間後には細胞膜透過性が亢進し、ヨウ化プロピジウム (PI) の細胞内への取り込みが増加した。PI の取り込みは補体処理 24、48時間後と継時的に増加した。プリオン感染24日後の神経細胞に補体を反応させると、PIの取り込みは6時間後に最大となり、24、48時間後では陰性対照と同程度であった。この傾向はChandler株でも22L株でも同様であった。以上の結果から、補体反応による細胞膜透過性の亢進は一過性であり、細胞死は起こっていないことが示唆された。補体反応により誘導される細胞膜透過性の亢進が異常型プリオンタンパク質 (PrPSc)の蓄積に影響を与えるかを検討した。Chandler感染神経細胞では、感染12日後から補体因子を添加し、8日間培養してもPrPSc量に変化は認められなかったが、感染20日後から添加すると、PrPSc量が減少した。22L感染細胞では感染12日後から補体因子を添加するとPrPSc量が増加したが、感染20日後から添加してもPrPSc量に変化は認められなかった。これらの結果から、補体反応により誘導される細胞膜透過性の亢進は、Chandler株と22L株ではPrPScの増殖に全く逆の影響を与えることが示唆された。
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