2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23780306
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
寸田 祐嗣 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (20451403)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 人獣共通感染症 / 狂犬病 / 抗体産生細胞 / 脳内免疫 / ケモカイン |
Research Abstract |
致死的な人獣共通感染症である狂犬病に代表されるような、神経細胞へのウイルス感染を伴う疾患に対する予防および治療法を開発するための基礎的知見を得ることを目的として、実験動物(マウス)を用いた研究を行った。 不活化ウイルス粒子を鞘内(脳内)に免疫すると、マウスの血清中に抗ウイルス抗体が誘導され、2回目の免疫後数日でピークに達すること、および皮下免疫したマウスの血中抗体と比較すると同等または鞘内免疫マウスの方が高い傾向があることが分かった。また、鞘内免疫マウスの脾臓と頚部リンパ節で高い抗体産生が起こっていることが判明した。鞘内免疫マウスの脳内では免疫グロブリンIgG遺伝子の発現が有意に高く、また免疫染色によって抗体産生細胞が脳軟膜に浸潤している様子が観察された。次に、強い神経向性を示すウイルスである仮性狂犬病ウイルス(ヘルペスウイルス)を免疫マウスの脳内に直接接種する実験を行った。その結果、鞘内免疫マウスは対照群および皮下免疫マウスに比べて、有意に高い生残率を示した。これらの結果は、鞘内免疫による抗ウイルス抗体産生細胞の脳内への誘導が脳内でのウイルス感染拡大を阻止する効果があることを示している。 次に、抗体産生細胞の脳内誘導メカニズムを調べるために、各種走化性因子の発現に注目した。その結果、鞘内免疫マウスの脳内には抗体産生細胞誘導やその維持に関わるケモカインまたはサイトカインであるCXCL9, 10, 12, 13およびBAFFが高発現していることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
未達成事項のひとつは脳内で遺伝子発現が上昇していたケモカインについて、その発現細胞の同定を行うことである。検出感度と材料の保存条件等により、免疫染色によりケモカインやサイトカイン発現細胞の同定は困難であったため、今後さらに条件を検討する必要がある。一方、ケモカインの機能解析の一部については、当初の予定よりも早く解析に着手しており、免疫マウスから抽出した細胞を用いてin vitroで各種ケモカインに対する走化性の検討を開始している。以上より、未達成の部分と予定より進んでいる部分があるが、概ね順調に研究の目的達成に向けて研究が進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫マウスの脳内で発現上昇が確認された各種ケモカインの機能を解析するためにin vitroの走化性試験を継続して実施する。さらに、末梢免疫マウスの脳内へケモカインを投与することによって、抗体産生細胞の脳内への誘導試験を実施する予定である。その後、狂犬病ウイルス感染実験によって、脳内免疫におけるケモカインの重要性を検証する。得られた成果を学術論文としてまとめ、国際学術誌へ投稿し、研究成果と意義を広く発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウスからのリンパ球分離とケモカイン発現解析の条件検討に研究開始当初に予想していたよりも時間を要してしまったため、本年度の研究費の一部を次年度に持ち越した。次年度に繰り越した研究費については、ケモカイン発現細胞の同定のための免疫染色に必要な染色試薬と抗体などの一般消耗品物件費として使用する。また、実験動物(マウス)、ケモカイン、一般試薬、プラスチック製品、ガラス製品などの一般消耗物件費、動物実験施設利用料の支払い、さらに、成果の発表、専門家との意見交換、情報収集のための学術集会への参加費と旅費に使用する。論文作成に際しては、英語校正料と投稿料として使用する。
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