2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23780306
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
寸田 祐嗣 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (20451403)
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Keywords | 病理学 / ウイルス / 抗体 / 中枢神経系 / 神経細胞 / ケモカイン |
Research Abstract |
本課題は狂犬病や仮性狂犬病などの難治性の神経親和性ウイルス感染症に対する予防・治療法を開発することを目的とした基礎研究である。主にマウスによる動物実験を行うことにより、脳内への不活化ウイルス投与によって脳内に抗ウイルス抗体産生細胞が誘導されること、各種ケモカインの遺伝子発現が上昇することを見出した。また、ウイルス接種実験を行い、このワクチン方法によりウイルスの脳内増殖が阻止され、マウスが有意に生残することが明らかとなった。以上の初年度成果を踏まえて、最終年度には、「末梢に誘導された免疫反応を脳内にも誘導する方法」を検討した。その結果、リンパ球の走化に関わる各種ケモカインの中でも特にCXCL12が重要な因子であることを見出した。すなわち、末梢免疫マウスの脳内にCXCL12を投与することによって、抗ウイルス抗体産生細胞を脳内にも誘導できた。さらに、CXCL12の脳内への投与によって、狂犬病ウイルスの脳内増殖を阻止できることを見出した。しかし、仮性狂犬病ウイルス接種マウスは2日以内に多くのマウスが死亡もしくはエンドポイントに達したため、抗ウイルス効果が観察されなかった。その原因として、神経細胞内でのウイルスの増殖速度の違い、非常に素早く増殖するヘルペスウイルスに対しては、ケモカイン発現とそれに続く免疫細胞の脳内誘導では、ウイルスの脳内増殖を阻止することが難しいことが示唆された。結論として、抗ウイルス抗体産生細胞の脳内誘導は抗ウイルス効果を発揮すること、その反応にはケモカインCXCL12が関与すること、特に比較的増殖速度の遅い脳内ウイルス感染症に有効であることを実験的に証明した。また、抗ウイルス抗体は狂犬病ウイルス感染細胞からの子孫ウイルス粒子放出を阻害すること、核酸の一部(ウリジン三リン酸)が抗ウイルス抗体産生を促進するアジュバントとして機能することを示唆する結果を得た。
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