2011 Fiscal Year Research-status Report
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23780308
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
峰松 健夫 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (00398752)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 創傷感染 / Quorum Sensing / AHL / R蛋白質 |
Research Abstract |
従来の創傷感染症対策はいずれも病原細菌に直接働きかけ排除することを目的としていた。しかし、このような対策では新たな耐性菌の出現の脅威から逃れることができない。私たちは細菌間情報伝達システムであるQuorum Sensingに着目し、情報伝達物質(Autoinducer)の細胞外における補足による病原因子発現阻害、つまり創傷感染を制御する技術の開発を目的として本研究を実施している。モデルとして、皮膚常在菌の一つであり、また創傷感染の主要な起因菌である緑膿菌を用い、緑膿菌のautoinducerであるAHL(Acylated homoserine lactone)をターゲットとした。これまでに、緑膿菌におけるAHL受容体の一つであるR遺伝子をクローニングし、In vitro発現系を用いてRecombinant蛋白質の合成、および合成したR蛋白質がAHLと結合能を有することを確認した。本年度はAHL合成酵素を欠損した緑膿菌株を用い、合成R蛋白質とAHL混合液を培養液に添加することで、R蛋白質による病原因子発現阻害効果を明らかにすること、および全層欠損創モデルラットを用いてR蛋白質溶液の局所投与による創傷感染防止効果を明らかにすることを試みた。その結果、In vitroではR蛋白質による病原因子発現阻害効果は確認できたものの、In vivoにおける創傷感染防止効果を証明することができなかった。これは、R蛋白質が外来抗原として宿主免疫系に認識された結果であろうと考えられる。また、本研究を実施する過程においてAHLが全層欠損創の治癒を促進する効果を有するという新たな知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
期待された効果がIn vivoでは認められず、研究の方針転換が必要となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究により、合成R蛋白質の局所投与による創傷感染制御は宿主免疫によって阻害されることが示唆された。そこで、AHLの細胞外での補足による病原遺伝子発現阻害というコンセプトを生かしつつ研究方針を転換することとする。これまで、アルブミンなどの蛋白質で標識したAHLを免疫することで、AHLが抗原として認識され宿主内において抗AHL抗体が産生されること、またそのように免疫した動物では緑膿菌による肺炎の発生が有意に低下することなどが報告されている。そこで、本年度はAHL-アルブミン複合体の静脈注射による創傷感染制御の可能性を明らかにすることとする。具体的には、(1)AHL-BSA (Bovine Serum Albumin)の合成、(2)AHL-BSA免疫ラットにおける抗AHL抗体価の測定、(3)AHL-BSA免疫ラットの全層欠損創に緑膿菌を摂取した際の病態変化の観察を行う。なお、対象としてBSAのみを免疫したラット、AHLのみ免疫したラット、および無処理ラットを用いる。また、昨年度、副次的に見いだされたAHLによる創傷治癒促進効果についても、培養細胞および治癒の進行が遅延する糖尿病モデルラットを用いて、証明することとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
In vivo実験の中間解析により、当初の方針では期待された効果が認められないことが明らかとなり実験を中断したため、残金を繰り越すこととした。本年度は、AHL-BSAの免疫による創傷感染制御、およびAHL局所投与による創傷治癒促進の研究にかかわる試薬、消耗品、実験動物などの物品費、学会発表等の旅費、論文投稿に際しての投稿料や英文構成等、実験手技等の指導等に対する謝金などに研究費を使用することを計画している。
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Research Products
(6 results)