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2011 Fiscal Year Research-status Report

豚レンサ球菌莢膜関連遺伝子群の網羅的解析及び遺伝学的血清型別法の開発

Research Project

Project/Area Number 23780310
Research InstitutionNational Agriculture and Food Research Organization

Principal Investigator

大倉 正稔  独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・細菌・寄生虫研究領域, 研究員 (60508315)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2013-03-31
Keywords細菌 / 獣医学 / 人獣共通感染症 / レンサ球菌 / 血清型別
Research Abstract

豚レンサ球菌は豚やヒトに髄膜炎や敗血症、心内膜炎等を引き起こしうる人獣共通感染症起因菌であり、莢膜多糖の抗原性の違いにより30以上の多様な血清型に分類されている。近年、血清型が変異した強毒株による事例が発生しており、本菌によるさらなる新興感染症を制御する上で、流行血清型の把握とその多様化メカニズムの解明は必要かつ重要な学術的知見である。しかし、型別用血清が高価なため検査現場での血清型別が難しく、血清型に関する遺伝的情報も限られている。そこで、本研究課題では、全血清型株の莢膜合成関連遺伝子群を網羅的に解析して、血清型が30型以上に多様・分化した遺伝的背景を明らかにする。同時に、その情報から検査現場で利用可能な遺伝学的血清型別法も開発する事を目的としている。 平成23年度は現在、血清型参照株として使用されている全35株[1型-34型及び1/2型(1型と2型の両方の抗血清に反応)]の莢膜多糖合成に関わる遺伝子群[Capsular polysaccharide (CPS) locus]について比較・解析を行った。15血清型株のCPS locusについては他の研究グループが既に塩基配列を決定しており、残りの20血清型株について、CPS locusの塩基配列を決定した。既知の15のCPS locusは染色体上の特定位置に存在していたが、本研究で決定した20のCPS locusのうち、12については隣接する遺伝子が異なっていた。また、1型と14型及び2型と1/2型のCPS locusはほぼ一致しており、CPS locusによりこれらの4血清型株を識別するのは難しい事がこれまでに示唆されていたが、残りの31血清型株についてはそれぞれ特異的な遺伝子が存在しており、識別可能である事が明らかになった。さらに、複数の血清型株に共通する遺伝子も存在し、各血清型をグループ分けできる事も示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究の最終的な目標は「豚レンサ球菌の遺伝学的血清型別法の開発」と「血清型分化の遺伝学的背景の解明」であり、平成23年度の計画は「全血清型参照株のCPS locusの塩基配列の比較・解析」と「CPS locus周辺配列を含む交換や欠失、挿入等の変異点の検索」である。 「全血清型参照株のCPS locusの塩基配列の決定及び比較・解析」については、平成23年度実施した解析により、全血清型参照株のCPS locusの塩基配列が明らかになった。さらに各配列に基づく遺伝子の機能の割当や各遺伝子の相同性によるグループ分けが可能となり、複数の血清型が保有する遺伝子や単一の血清型のみしか含まれない遺伝子がそれぞれ認められた。以上の成果は最終的な目標である「遺伝学的血清型別法の開発」への基盤的情報として重要である。 「CPS locus周辺配列を含む交換や欠失、挿入等の変異点の検索」については、平成23年度実施した解析により、豚レンサ球菌におけるCPS locusのゲノム上の位置は、既報の15血清型で解析されたorfX遺伝子とaroA遺伝子に挟まれた領域だけでなく、少なくとも5種類ある事が明らかになった。また、CPS locusの下流側には交換や欠失、挿入等の変異が起こった痕跡が示唆される複数のtransposaseやその断片が固まって存在しており、この領域に関しては株間で多様性がある事も明らかになった。これらの結果は、系統的な関連性を調べる上で重要な手がかりとなり、目標の一つである「血清型分化の遺伝学的背景の解明」につながると考えられる。 以上から、平成23年度はほぼ計画通りに進んでおり、本研究は順調に進展していると考えている。

Strategy for Future Research Activity

「豚レンサ球菌の遺伝学的血清型別法の開発」については、平成23年度の解析結果を基に、まず血清群に分類し、各群に共通する遺伝子を利用し、血清群別用PCR法を開発する。続いて、各血清型に特異的な遺伝子を利用し、血清群中のどの血清型であるかを最終的に決定する血清型同定用PCR法を開発し、2段階の工程で型別する手法を考案する。なお、1つのPCR結果から血清群や血清型を決定ができない場合は、別の領域を標的としたPCRを行い、複数のプロファイルを組み合わせて決定する。同時に、血清群別用PCR法及び血清型同定用PCR法の結果を各1回の反応で判定できるようにマルチプレックスPCR法への応用も試みる。考案したPCR法については、血清型参照株35株を用いて特異性を確認後、血清型が既に決定している国内外で分離された野外株を200株以上用いて、その信頼性及び実用性を試験する。また、本型別法については、その普及を目指す。 「血清型分化の遺伝学的背景の解明」については、35血清型のCPS locus下流側のtransposase領域を中心にさらに解析し、血清型株間の相同性による分岐の推定や交換の起こりやすい領域の検索を行う。さらに、orfX遺伝子とaroA遺伝子に挟まれた領域にCPS locusが位置していない血清型株については、両遺伝子の有無やゲノム上での位置を全ゲノム配列での解析により明らかにし、これらの血清型がどのようにして出現したのかについても、他の菌種との比較・解析も考慮して推定し、本菌の「血清型分化の遺伝学的背景の解明」につなげる。 なお、得られた成果については、国内外の学会で発表し、論文として公表する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり使用する。具体的には、「遺伝学的血清型別法の開発」に必要なプライマー設計費やPCR試薬(マルチプレックス用を含む)、野外株の培養に必要な培地等の試薬やDNA抽出に必要な試薬、さらに「血清型分化の遺伝学的背景の解明」のための周辺配列の解析に必要なプライマー設計費やPCR試薬、シークエンス試薬などの消耗品購入に使用する予定である。プライマー設計については少なくとも100 種類以上、PCRについては1,500 反応以上、そして、マルチプレックスPCR 法への応用にも400 反応以上の関連試薬が必要である。シークエンスに関しても200 反応以上を予定している。 得られた成果についても、研究室間でのディスカッションや国内外での関連学術学会で発表し、誌上発表も予定しており、そのための旅費及び論文投稿費(その他)にも使用する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2012

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] Streptococcus suis 血清型1型、2型、1/2型及び14型の莢膜合成遺伝子領域の比較解析2012

    • Author(s)
      大倉正稔、大崎慎人、関崎 勉、高松大輔
    • Organizer
      第85回日本細菌学会総会
    • Place of Presentation
      長崎ブリックホール(長崎)
    • Year and Date
      2012年3月29日

URL: 

Published: 2013-07-10  

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