2011 Fiscal Year Research-status Report
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23780325
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
秋吉 秀保 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (50420740)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 犬 / リンパ腫 / キメラ抗体 |
Research Abstract |
(1)犬リンパ腫における標的分子(Syndecan 4およびCD20)の遺伝子クローニング:健常ビーグル犬由来のリンパ球からTotal RNAを抽出し、オリゴd(T)プライマーを用いてcDNAを合成した。このcDNAを鋳型として、それぞれの標的分子の細胞外ドメインに特異的なプライマーを用いて、PCRにより増幅した。増幅産物についてサブクローニングを行なった。配列解析を行ない、他の動物種と比較する事により、目的の遺伝子である事を確認した。(2)Syndecan 4およびCD20の遺伝子組換えタンパクの作製:大腸菌による蛋白の発現・精製のために、発現ベクターであるpet16Bにクローニングした標的分子の遺伝子を挿入し、Hiss-Tag融合蛋白として発現させ、目的の遺伝子組換え蛋白を作成した。(3)犬IgG定常領域(CHおよびCL)の遺伝子クローニング:キメラ抗体作成のため、 (1)にて作製したcDNAより犬IgGの定常領域(軽鎖および重鎖)をサブクローニングした。(4)犬悪性リンパ腫症例からのサンプル採集:本学付属獣医臨床センターに来院したリンパ腫症例の中から、外科的切除などによる組織生検によって病理組織学的に診断可能な症例を選択し、以下の研究に供した。(4)-1 リンパ腫組織の分類:摘出腫瘍組織の病理組織学的検索, モノクローナリティ解析(T細胞レセプターγ鎖再構成あるいは免疫グロブリンH鎖再構成)およびFACSによる表面抗原解析によってリンパ腫の腫瘍型を特定した。(4)-2 リンパ腫における標的分子の発現解析:採集したリンパ腫組織からtotal RNAを作製し、逆転写反応後、標的分子を増幅するために設計したプライマーをもちいてリアルタイムPCR法による標的分子の発現解析を行なった。その結果、T細胞型リンパ腫ではCD25の発現が有意に高いことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では, 犬の悪性リンパ腫における分子標的治療薬の開発を目的とし、犬のリンパ腫における標的タンパク質の発現状況を明らかにするとともに、標的タンパク質(Syndecan 4, CD25およびCD20)に特異的に結合する犬化抗体(キメラ抗体)を作製する事により、小動物獣医療における新たな治療法を開発する事を目的として計画した。この目的に沿って、平成23年度は(1)犬リンパ腫における標的分子(Syndecan 4およびCD20)の遺伝子クローニング、(2)Syndecan 4およびCD20の遺伝子組換えタンパクの作製、(3)犬IgG定常領域(CHおよびCL)の遺伝子クローニング、(4)犬悪性リンパ腫症例からのサンプル採集を計画したが、おおむね計画通りに進展させることが可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究に必要なCD25, CD20, SD4の遺伝子クローニング, CD25遺伝子組換えタンパクおよび抗犬CD25抗体の作製を終えた。平成24年度は平成23年度から継続して、リンパ腫腫瘍サンプルを採集する計画である。リンパ腫サンプルの採集を促進するため、近隣の動物病院への協力を依頼するとともに、協力者として大阪府立大学 鳩谷晋吾 助教, 古家 優 助教ならびに院生2名の協力を得るとともに病理学的所見について大阪府立大学 山手丈至 教授に助言をいただく。また、 平成24年度は平成23年度に作成した標的分子の遺伝子組換え蛋白を抗原とした抗体ライブラリーの作成とファージディスプレイ法による抗犬標的分子モノクローナル抗体の作製を計画している。抗体作製が計画通り進まないときは、ファージディスプレイを用いた抗体作製を長年実施し、造詣の深い大阪府立大学 松山 聡 准教授、分子生物学的実験手法全般において幅広い経験と見識を持つ大阪府立大学 竹中重雄 准教授と緊密な連携をとる事により、不測事態が生じないように最大限配慮する。また, 本研究課題の遂行に当たって、研究全般を通じて大阪府立大学 大橋文人 教授ならびにテキサス大学 有泉潔 准教授にアイデアの提供と適宜助言を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は平成23年度から継続して、リンパ腫腫瘍サンプルを採集する計画である。採集したリンパ腫サンプルは病理組織学的検索、遺伝子クローナリティ解析(T細胞レセプターγ鎖再構成あるいは免疫グロブリンH鎖再構成)およびFACSによる表面抗原解析、リアルタイムPCR法による標的分子の発現解析を計画しているため、外部検査機関での検査費、蛍光標識抗体などのFACS関連の消耗品、リアルタイムPCR関連の消耗品として研究費を使用する計画である。 一方で、 平成24年度は平成23年度に作成した標的分子の遺伝子組換え蛋白を抗原とした抗体ライブラリーの作成とファージディスプレイ法による抗犬標的分子モノクローナル抗体の作製を計画している。そのため、マウスの購入・飼育費、抗原の調整、免疫マウスの脾臓からの抗体ライブラリの作成などに関連する消耗品および実験補助費として研究費を使用する計画である。 これらの過程で得た成果を本年度の日本獣医学会にて発表するとともに誌上発表を計画している。そのための出張旅費ならびに英文校閲費として研究費を使用する予定でる。
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