2013 Fiscal Year Research-status Report
硫黄高含有生態系における硫黄脱窒による窒素循環と硫黄循環のリンク
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23780340
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
早川 敦 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10450280)
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Keywords | 硫黄脱窒 / 生物地球化学 / 硫黄酸化細菌 / 窒素循環 / 微生物群集 |
Research Abstract |
既往の多くの研究では、脱窒の電子供与体として有機物が注目されてきたが、還元型の硫黄も脱窒の電子供与体となりうる。したがって、含硫鉱物の豊富な秋田県では、還元型の硫黄を電子供与体とした脱窒(硫黄脱窒)が卓越しているかもしれない。しかし、生態系における堆積物や土壌中の還元型の硫黄脱窒に関する報告例は限られる。本研究の目的は、生態系における硫黄脱窒の可能性とそのプロセスの相対的な大きさを評価し、地下水や河川水質へおよぼす影響を明らかにすることである。H25年度は、パイライトを含有していると考えられる秋田県大潟村干拓地内において、30 mのコア試料を用いて深度別の脱窒能と堆積物の理化学性、微生物の群集構造を測定し、干拓地下層土の硫黄脱窒の可能性を検討した。脱窒能は表層で最も高かったが、下層においても、1.6から5 mおよび10.5 m付近にチオ硫酸添加処理において炭素添加処理を上回る脱窒能のピークが認められ、還元型硫黄を電子供与体とする脱窒のシグナルを検出した。微生物組成の解析の結果、下層では硫黄酸化細菌が優占し、脱窒能の高かった深度には脱窒能力を持つ細菌も検出され、土壌の脱窒能と細菌の組成が良く一致した。大潟村干拓地下層では、微生物を介した硫黄循環と窒素循環の密接なリンクが示唆され、窒素の負荷された農耕地土壌では硫黄脱窒の相対的な寄与が大きいと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大潟村内の0-30 mにおける深度別の脱窒能を測定し、堆積物の質(全硫黄、易酸化性硫黄含量)の測定も概ね予定通り実施できた。微生物群集構造の解析も実施することができ、概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、追加実験の他、研究成果の発表と学術誌への投稿を中心に研究を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年12月9日~13日に国際学会(AGU;アメリカ地球物理学連合、サンフランシスコ、米国)にて、八郎湖流域河川の堆積物と河川水質に関する発表を予定していたが、堆積物の分析と解析に時間を要したことに加え、更なる分析が必要になったため参加できなかった。そのため、参加費(登録、渡航、宿泊)相当が未使用額として発生した。 2014年6月8日~13日に開催予定の国際学会(WCSS;国際土壌科学会議、済州島、韓国)で発表することにした。未使用額を参加費および追加実験費(消耗品費)として使用することとしたい。
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Research Products
(3 results)