2012 Fiscal Year Research-status Report
セラミドキナーゼによるマクロファージ細胞機能調節機構の解明
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23780344
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
光武 進 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 特任准教授 (10344475)
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Keywords | セラミド / セラミドキナーゼ / セラミド1-リン酸 |
Research Abstract |
肥満や動脈硬化といった病態は、様々な細胞が絡み合って起こる現象であって単一の細胞実験で十分に解析する事は難しい。われわれは、CerK欠損マウスを保有する強みを生かし、in vivoの実験系と細胞レベルの実験系の両方を行い、CerKのマクロファージ細胞機能と、それらが関与する肥満や動脈硬化といった病態での機能に迫りたいと考えている。昨年度までにCerK欠損マウスが高脂肪食誘導性肥満や耐糖能以上を回避する事を明らかにした。本年度は、その詳細なメカニズムの解析を試みた。その結果、CerK遺伝子欠損マウスでは、野生型マウスに比べて、体重増加に伴う、脂肪組織へのマクロファージの浸潤が強く抑えられていた。脂肪組織に侵入したマクロファージは、脂肪細胞の周りに集まり、脂肪細胞を貪食し、泡沫化する。特に脂肪細胞の周りをマクロファージが取り囲み、王冠の様な形態を作る事が知られ、crown like structure (CLS)と呼ばれる。脂肪組織におけるCLSの数をカウントした所、CerK遺伝子欠損マウスの脂肪組織では、殆どCLSの形成が観察出来なかった。CLSを形成すると、泡沫化したマクロファージから様々な炎症性サイトカインが放出され、肥満に伴う慢性的な炎症状態になり、II型糖尿病の発症へとつながる。CerK遺伝子欠損マウスでは、初期段階のマクロファージの脂肪組織への浸潤が強く抑えられており、マクロファージの化学遊走に関するサイトカインへの反応性が低下している事が考えられた。今後は、このマクロファージのお化学遊走に関わるシグナル伝達系を詳細に解析する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
われわれは、CerK欠損マウスを保有する強みを生かし、in vivoの実験系と細胞レベルの実験系の両方を行い、CerKのマクロファージ細胞機能と、それらが関与する肥満や動脈硬化といった病態での機能に迫りたいと考えている。昨年度までは、特に食餌誘導性肥満とCerKの関係を動物レベルで検証する事を当初の目的としていた。本年度は、そのターゲット分子を絞込む事を目標としていたが、結果的にマクロファージの化学遊走に関わるシグナル伝達系の関与を明らかに出来た。最終年度は、細胞レベルの実験でさらに掘り下げた研究を行う予定であり、全体としては、当初の予定通りすすんでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、CerKとマクロファージの機能に着目し、マウスを用いた個体レベルの病態解析と、単離した細胞を用いてその分子メカニズムの解明を目指す。本年度は、マウスの個体レベルの実験を掘り下げ、マクロファージの化学遊走に関するシグナル伝達に、CerKの作用がある事をつかんだ。これらの結果を基に、次年度は細胞レベルの実験、特に、ケモカイン受容体の活性化とマクロファージの遊走とセラミドキナーゼの関係を詳細に解析して行く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、細胞レベルの実験を中心に行うので、細胞培養やケモカイン受容体のシグナル伝達解析に使用する抗体等の、細胞生物学的実験消耗品、生化学的実験消耗品、遺伝子解析消耗品、を主に使用する。また、成果発表の為の旅費にも使用する。
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