2011 Fiscal Year Research-status Report
ゴルジ体膜内在性のロンボイド型プロテアーゼが切断する基質の同定と機能解析
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23780347
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
田中 直孝 香川大学, 農学部, 准教授 (60324109)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 分裂酵母 / ロンボイドプロテアーゼ |
Research Abstract |
ロンボイドプロテアーゼ(ロンボイド)は、膜内プロテアーゼファミリーに属するセリンプロテアーゼである。複数回膜貫通領域を持ち、基質となる膜タンパク質の膜貫通領域を切断する。ロンボイドは原核微生物から脊椎動物に至るまで保存されているが、ゴルジ体で機能するロンボイドはショウジョウバエ増殖因子の切断による活性化の報告のみで、他の生物における役割は不明である。本研究は分裂酵母Schizosaccharomyces pombeに存在するゴルジ体局在性のロンボイドについて、遺伝子破壊株の表現型解析と基質の同定を目的とした。 分裂酵母にはロンボイドと相同性の高い遺伝子が4つ存在しており、そのうち2つがミトコンドリア局在、2つがゴルジ体局在(Rob1,Rob2 (Rhomboid))であることが分かった。破壊株を単離し、種々の表現型を確認した結果、rob1Δ株は亜鉛やコバルトに感受性を示した。分泌輸送への影響を確認するために、液胞へ選別輸送されるカルボキシペプチダーゼY(CPY)の漏出をコロニーブロットにより確認した結果、細胞外へ誤輸送されることが分かった。これらのことから、Rob1は細胞内の亜鉛及びコバルトの恒常性や、ゴルジ体において液胞タンパク質の選別輸送に関与していることが示唆された。rob2Δ株は、トランスゴルジネットワーク領域の逆行輸送を阻害するモネンシンに対し感受性を示したが、CPYの輸送に障害は見られなかった。このことからRob1,Rob2はゴルジ体において異なる機能を有していることが示唆された。また、ロンボイドの基質認識モチーフを有するゴルジ体膜結合型転写因子の細胞内局在を確認した結果、rob1Δ株では核移行の遅延が観察されたことから、ゴルジ体膜からの遊離にRob1が関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) ゴルジ膜局在性ロンボイドが何を切断しているのか、相互作用するタンパク質及び標的タンパク質のスクリーニングを行う。1. 遺伝子ライブラリーを用いた網羅的な解析。ロンボイド遺伝子破壊株の薬剤感受性の表現型を利用し、制限酵素の異なる3種類の遺伝子ライブラリーを発現させることで、感受性を相補する抑制遺伝子の単離を試みている。順調にスクリーニングは進んでいるが、ポジティブクローンはまだ得られていない。 2. ゲノムデータベースからの解析。機能未知な膜タンパク質やこれまでに輸送に関わっている事が分かっている膜タンパク質を含めて、23種類の膜1回貫通タンパク質を候補として取り上げ、これらがゴルジ体膜上において野性株では切断され、ロンボイド破壊株では切断されないことをSDS-PAGEにより確認している。10種類の確認が終了し、何れも切断されないことを確認した。(2) 基質タンパク質の候補の1つである、ゴルジ体膜局在型転写因子の切断機構を解析する。rob1破壊株はゴルジ体膜局在型転写因子Sre2が核へ移行せず、ゴルジ体に局在した状態が続くことを確認している。Sre2pの機能はこれまでに報告が無いが、申請者はsre2破壊株が液胞タンパク質の誤輸送を示すことも見い出していることから、rob1破壊株と表現型の1つが一致していることが分かった。切断モチーフの内、被切断に重要なアミノ酸を同定した。(3) 機能未知のヒト培養細胞由来ロンボイドの分裂酵母での発現と機能解析。 Rob1と相同性が高いRHBDD1を分裂酵母のロンボイド破壊株で発現させ、表現型を相補するか確認している。他の5種類は、Hela細胞のcDNAからホモログ遺伝子を単離している。異種膜タンパク質の過剰発現は立体構造障害を来す可能性を考慮し、プロモータには穏やかな発現量の分裂酵母の糖ヌクレオチド輸送体由来を使用している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 23年度に引き続き3つのアプローチからのスクリーニングは続行するが、基質候補や相互作用するタンパク質候補が同定できたものから、多重遺伝子破壊株の作製と表現型の解析を行うことで、ゴルジ体に存在するロンボイド型プロテアーゼの機能(切断による膜タンパク質の活性化や選別輸送の制御)を解明する。実験系は申請者が既に確立している手法を適宜改変しながら進める。複数の基質が同定できた際は、切断部位の特徴をアミノ酸の部位特異的変異により比較解析し、扱いやすい人工基質の作製を行いたい。人工基質は真核生物由来のロンボイドでは初となる結晶構造解析にも利用することが可能であり、切断機構の詳細な解析にも挑戦したい。(2) 23年度から引き続き、ゴルジ体膜局在型転写因子の切断機構を解析する。rob1破壊株のコバルト感受性はステロール生合成遺伝子の発現制御に関与しているsre1破壊株の表現型と一致していることを見いだしている。これまで、Sre1pのゴルジ体膜からの切断機構は解明されておらず、Rob1との関連性を細胞内局在解析、遺伝子破壊株の表現型解析により明らかにする。Sre1及びSre2のようなゴルジ体膜を足場とした転写因子の活性化機構の解析は動物だけでなく植物細胞の機能未知なゴルジ体膜局在型転写因子にも適応でき、(3)での解析対称にもなり得る。(3) 機能未知のヒト培養細胞由来ロンボイドの分裂酵母での発現と機能解析 24年度は動物細胞の実験系も有する事から、Hela細胞のロンボイドホモログ遺伝子に対してsiRNAで複数ノックダウンも試み、分裂酵母で見られる様な分泌タンパク質(特にリソソームへ選別輸送されるタンパク質)の輸送障害や膜結合型転写因子の切断過程に異常を来すか解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分裂酵母の遺伝子ライブラリーの調製及びロンボイドプロテアーゼの基質候補の改変による人工基質の作製など、遺伝子工学にかかる経費として使用する。また、それらの検出や精製に関わる消耗品の購入にも使用する。培養細胞や微生物の培養に関する試薬の購入にも使用する計画である。研究の進展に伴い、臨機応変に最低限必要な物品を購入することを計画している。
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Research Products
(1 results)