2011 Fiscal Year Research-status Report
糸状菌に特異的なガラクトフラノース糖鎖の生合成に関与する遺伝子の同定と機能解析
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23780350
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
岡 拓二 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (50510690)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 糸状菌 / 糖鎖 / ガラクトフラノース / 糖転移酵素 / 細胞壁 |
Research Abstract |
本研究では、糸状菌に特徴的な糖鎖であるガラクトフラノース(Galf)糖鎖に注目し、Galf糖鎖の生合成に関係する糖転移酵素遺伝子を同定するとともに、Galf糖鎖そのものの生理的意義や機能について基礎的知見を得ることを目的とした。ガラクトフラノース(Galf)糖鎖には、O-結合型糖鎖および N-結合型糖鎖の非還元末端側に結合したものとGalfのβ1,5-オリゴマー(ガラクトフラナン)として存在しているものとがある。Galf糖鎖の生合成経路は、Aspergillus fumigatusが引き起こす肺アスペルギルス症の特異的な診断薬や治療薬開発のターゲットとしても期待されている。さらに、Galf糖鎖の生合成に関わる遺伝子の変異体を用いることで、肺アスペルギルス症の感染機構や病理メカニズムの解明に繋がると考えている。そこで、本研究では、病原性糸状菌(A. fumigatus)のGalf転移酵素遺伝子の同定及び機能解析を試みた。 平成23年度は、A. fugamitus の生物情報より絞り込みを行い16種類のGalf転移酵素候補遺伝子の遺伝子破壊株の取得を試みた。16 個の機能未知遺伝子の構造遺伝子より上流の1 kb および下流の1 kb の断片をPCR によってそれぞれ増幅し、それらの断片の間に選択マーカーであるptrA遺伝子を挟み込むような形をフュージョンPCR 法によって作製した。この遺伝子破壊用カセットをプロトプラスト-PEG 法を用いて導入し、得られた形質転換体から遺伝子破壊株を選抜した。遺伝子破壊の確認は各遺伝子の上流側1.2 kb 付近とptrA 遺伝子の内部配列を挟み込むようにデザインしたオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCR によって行った。その結果、全ての候補遺伝子について遺伝子破壊株の取得に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、糸状菌に特徴的な糖鎖であるガラクトフラノース(Galf)糖鎖に注目し、Galf糖鎖の生合成に関係する糖転移酵素遺伝子を同定することを目的としている。平成23年度は、Aspergillus fumigatusの生物情報より絞り込みを行い16種類のGalf転移酵素候補遺伝子を選抜し、各遺伝子の破壊株の取得を試みた。その結果、A. fumigatusにおいて全てのガラクトフラノース転移酵素候補遺伝子について遺伝子破壊株の取得に成功した。これは、平成23年度に実施計画していた「16個の機能未知糖転移酵素遺伝子の迅速かつ簡便な破壊」の項目に記載された計画通りであり、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、計画の通り16種類全てのガラクトフラノース転移酵素候補遺伝子について遺伝子破壊株の取得に成功した。平成24年度は、16 種類の遺伝子破壊株の表現型を形態学的、生化学的、構造化学的手法を駆使し、親株と比較解析することによって、16 種類の機能未知糖転移酵素のうち、O-結合型糖鎖およびN-結合型糖鎖のGalf糖鎖合成に関与するものを特定する。さらに、詳細な解析を進めることにより、Galf糖鎖そのものの生理的意義や機能を、特に細胞壁形成における役割に注目して明らかにする。 具体的には、16 個の機能未知糖転移酵素遺伝子破壊株において、O-結合型糖鎖およびN-結合型糖鎖のGalfが欠失しているものを検索する。まず、糖タンパク質を抽出し、ヒドラジン分解法によりO-結合型およびN-結合型糖鎖をそれぞれ遊離する。遊離した糖鎖を蛍光物質である2-アミノピリジン(PA)によってラベルし、蛍光検出装置を備えたHPLC によって分離、検出する。検出された糖鎖をMALDI-TOF-MS によって分子量を決定し、構造を決定する。また、必要性があれば、大量に糖鎖を精製し、NMRに供与することで完全な構造決定を行う。16 種類の機能未知糖転移酵素破壊株と親株の糖鎖構造について、O-結合型糖鎖とN-結合型糖鎖にターゲットを絞って比較解析することにより、Galf糖鎖合成に関わる遺伝子の特定を行う。 特定された遺伝子のcDNAをRT-PCR法によって取得し、出芽酵母を宿主とした組換え酵素の発現を行い、酵素を精製する。組換え酵素の酵素活性を測定することで、Galf糖転移酵素であるという確かな証拠を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、42001円の直接経費未使用金が発生した。これは、遺伝子破壊株の取得が、当初計画よりもスムーズに進んだため、遺伝子破壊に用いるDNA断片を増幅する際に用いたDNAポリメラーゼの購入量が少なく済んだためである。平成24年度は、16 個の機能未知糖転移酵素遺伝子破壊株において、O-結合型糖鎖およびN-結合型糖鎖の構造解析を進めていく計画である。よって、糖鎖構造解析に必要な、試薬類、プラスチック器材類、酵素類を物品費として請求する。また、糸状菌の研究に継続的に必要である培地類、試薬類、プラスチック器材類およびガラス器材類も物品費として請求する。平成23年度にも、一部の遺伝子破壊株のO-結合型糖鎖およびN-結合型糖鎖の構造解析を前倒しして行ったため、当初計画よりも早く、蛍光検出器に装備されたキセノンランプの寿命がきてしまった。よって、平成23年度の直接経費未使用金は、キセノンランプの購入に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)