2011 Fiscal Year Research-status Report
マグネシウムビスアミドを用いる新規ベンザイン発生法の開発と生理活性天然物の全合成
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23790004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡野 健太郎 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30451529)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | マグネシウムビスアミド / ベンザイン / ディスコハブディン / テレオシジン |
Research Abstract |
平成23年度は、マグネシウムビスアミドを基軸とする新規複素環合成法をさらに発展させた。まず、本反応の基質一般性や適用可能な求電子剤を明らかにした。本分子間反応は位置選択性の制御が困難であるが、求核種を分子内の側鎖から導入することで、この問題点を解決できた。ベンザイン生成-環化-官能基化による連続反応の一般性について、求核部位、脱離基、導入可能な置換基、形成可能な環の員数について検討した結果、単純な求電子剤による捕捉に加えて、ワンポットクロスカップリング反応に展開することにより、従来は困難であったアルケニルおよびアルキニル基の導入にも成功した。本方法を用いることでheptaphyllineの効率的合成を達成した。 高度に置換されたイミノキノインドール骨格を有する、抗腫瘍活性天然物ディスコハブディンCの合成研究に着手した。上で得られた知見に基づき、最適化された反応条件によりインドールから6員環形成とヨウ素の導入を一挙に行い、三環性化合物を得た。その後、カップリングおよびアミンユニットの導入を経て、ディスコハブディンCの全合成に向けた検討を行った。 テレオシジンBの合成に向けて、ベンザインとフランとの[4+2]環化付加反応に関して検討を行った。その結果、マグネシウムビスアミドが既存の塩基より優れていることを確認することができた。すなわち、エステルを有する基質を用いると、亜鉛アート錯体では穏和すぎるために加熱しても原料の消失が遅く、目的物が低収率にとどまったが、類似のリチウムアミドではエステル部位が求核付加により損なわれた。一方、Mg(TMP)2・2LiClでは良好な収率で目的物が得られたことから、本塩基の適度な反応性と高い官能基共存性を活かした汎用性の高い環化付加反応を開発することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マグネシウムビスアミドの特性を十分に生かした、新規複素環合成法を確立した。従来合成困難な多置換インドリン、カルバゾールも容易に得られることを利用して、heptaphyllineの全合成を達成した。また、ディスコハブディンに関しては、全ての炭素骨格の構築に成功しており、現在、保護基の除去に関して最終段階を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ディスコハブディンの合成に向けた検討を継続するとともに、テレオシジンBの全合成に向けた検討を行う。テレオシジンBについては、9員環ラクタムと縮環した6員環についてもマグネシウムビスアミドの特徴を十分に利用して全合成を行う。すなわち、予備的検討で明らかとなった、OTf基の脱離能がBr基よりも優れていることを利用すれば、位置選択的にベンザインを発生させることが可能になり、まずは分子内の窒素アニオンから環化反応が進行すると考えた。続いて、ワンポットで再びベンザインが発生すれば、フランとの分子間[4+2]環化付加反応により下部6員環を構築して一挙に付加体が得られる。この際、インドリン窒素原子上の保護基とフラン環上のアルキル基との立体反発により位置選択的に環化付加反応が進行すると予想した。その後、トリメチルアルミニウムによるフラン環の位置選択的な開環、生じた第3級カチオンへのメチル化を行い、テレオシジンBの下部骨格を構築する。続いて、バリンとの縮合の後、本反応により上部9員環ラクタムを構築して、全合成を完了する。なお、本変換反応が困難である場合は、Pd触媒もしくはCu触媒による分子内アミノ化反応を用いて上部9員環ラクタムを形成する。 また、ベンザインの発生にはMg(TMP)2・2LiCl(または2LiBr)が必須であることが分かっている。類似の塩基としてMg(TMP)Cl・LiClやMg(TMP)2を用いても全く環化付加体が得られないことから、Mgに対して2分子のTMPおよびリチウム塩の添加が必要である理由についても計算化学を用いて考察する。 上に挙げた単位反応の開発および生理活性天然物の全合成への展開について得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度未使用額は、主に震災による研究停止(2ヶ月)により生じたものであり、次年度の物品費として使用する。また、成果発表旅費として、30万円を計上した。
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Research Products
(11 results)