2011 Fiscal Year Research-status Report
不斉記憶型反応を用いる新規アミノ酸とアミノ酸由来天然物の合成
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23790010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉村 智之 京都大学, 化学研究所, 助教 (20432320)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 不斉記憶型反応 / 不斉合成 / 全合成 / 非天然アミノ酸 / 天然物 |
Research Abstract |
1)アスパラギン酸ーグルタミン酸ハイブリッド型新規アミノ酸の合成。フェニルアラニンベンジルエステル,バリンエチルエステル,トリプトファンエチルエステルから N-PMB 化,N-アシル化によって合成した環化前駆体を炭酸セシウム/エタノールまたはアセトニトリル中フェノール存在下炭酸セシウムを用いる条件で不斉記憶型反応に付し連続三置換-四置換不斉炭素を持つβーラクタムを高エナンチオ選択的に合成した。フェニルアラニン誘導体のβ-ラクタム誘導体に対し,酸化的に N-PMB 基を脱保護後 N-Boc 化を行いイミドとした。この段階でジアステレオマーを分離後水酸化リチウムと過酸化水素水を用いてβーラクタム環の開環を行った。現在本化合物から脱 Boc 化,脱ベンジル化,tert-ブチルエステルの除去によりアミノ酸への変換を検討中である。2)マンザシジン A の全合成を指向した不斉記憶型分子間共役付加反応の開発。アラニンベンジルエステルより N-Boc 化,N-MOM 化によって合成した基質とセリンより合成したデヒドロアラニン誘導体との不斉記憶型共役付加反応の条件検討を行った。アラニン誘導体から生成する C-N 軸性不斉エノラートのラセミ化半減期は -78℃ でも1時間と短いため,生成したキラルエノラートとマイケル受容体との反応速度を向上させる目的でアラニン誘導体とデヒドロアラニン誘導体存在下に強塩基を加える方法で実験を行った。その結果,塩基にカリウムヘキサメチルジシラジドを用い DMF/THF (1/1) 中,-78 ℃で反応を行うことで目的のカップリング成績体が 30/70 のジアステレオマー混合物としてほぼ定量的に得られた。ジアステレオマーを分離後それぞれの光学純度を測定したところいずれも 97% ee であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,不斉記憶型反応を用いた新規アミノ酸生理活性物質の創製とアミノ酸及びその代謝産物由来の生理活性天然物の全合成を目的としている。現在,弱塩基炭酸セシウムとプロトン性添加剤を用いるマイルドな不斉記憶型分子内共役付加反応による連続三置換-四置換炭素含有β-ラクタムの合成法を確立しフェニルアラニン,バリン,トリプトファン,セリンから種々のβ-ラクタム類を合成した。このうちフェニルアラニンから誘導したβ-ラクタムを用いて条件検討を行ったところβ-ラクタム環の開環法を見いだした。本化合物からアミノ酸への誘導はエステル部分の除去のみで現在条件検討を継続中である。 また、不斉誘導が困難と考えられた不斉記憶型共役付加反応の開発に取り組んだ。その結果、マイケル受容体と実験方法を詳細に検討することで所望のカップリング体が高い光学純度で得られることを見いだした。本反応を利用することでブロモピロールアルカロイドであるマンザシジン A の全合成も達成した。以上の結果から本研究の目的はおおむね順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)アスパラギン酸ーグルタミン酸ハイブリッド型新規アミノ酸の合成。本研究ではエステル部分の脱保護(加水分解)が未解決である。加水分解後に得られるアミノ酸は精製が困難であると予想される。そこですべてのエステルをベンジルエステルへ変換後水素添加処理により脱ベンジルエステルを行うルートでのアミノ酸への変換を試みる。本ルートは濾過後濃縮するだけでアミノ酸が得られる。また,他の天然型αーアミノ酸を出発原料としアスパラギン酸ーグルタミン酸ハイブリッド型アミノ酸を合成する。2)不斉記憶型分子間共役付加反応の展開とマンザシジン A 誘導体の合成。アラニン誘導体とデヒドロアラニン誘導体間の不斉記憶型分子間共役付加反応の条件を用いて,種々のアミノ酸誘導体をマイケル供与体とする反応を検討し本反応の基質一般性を見極める。また,本反応を鍵とするマンザシジン A の全合成ルートを活用し,マンザシジン A の類縁体合成を行い本反応の有用性を見極める。3)フリンデロール類の全合成研究。トリプタミンを出発原料とし不斉記憶型反応を用いるフリンデロール類の全合成を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では天然型アミノ酸や種々の強塩基,溶媒を用いる。そこで次年度の研究費はこれら試薬のような消耗品に用いる。また,光学純度の決定に用いる HPLC 用のキラルカラムの購入にも使用する。さらに本研究を通じて得られた結果を学会等で公開すべく旅費としても使用する。
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Research Products
(17 results)