2012 Fiscal Year Research-status Report
ワンポット縮合‐酸化反応を利用する実用的含窒素複素環合成とその応用
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23790011
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村井 健一 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70532068)
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Keywords | 複素環化学 / ワンポット反応 / 酸化反応 / アミナール |
Research Abstract |
含窒素複素環化合物は生物活性化合物中に多く含まれる構造単位であるだけでなく、合成化学や材料化学をはじめ様々な用途に利用されているため、その効率的合成法の開発は重要である。本申請研究では、含窒素複素環化合物の効率的で実用的な合成法の開発を目指すと共に、その応用研究に取り組んでいる。 申請者はこれまでワンポット縮合‐酸化反応によるアルデヒドからの複素環合成を報告している。また、23年度にはケトンを基質とする反応について検討し、シクロブタノンと様々なジアミンから生成するアミナールのNXS(X=Cl,Br)処理によりハロアミナールの転移反応を経て2環式アミジンを効率よく合成する手法の開発に成功した。本反応は優れた2環式アミジン合成法であるが、基質一般性の面で課題を残していたため、本年度は基質一般性の拡張を目指して研究を行った。すなわち、シクロブタノンの様に歪の大きいケトンを用いなくても、溶媒にトリフルオロエタノールを用いることで転位反応が速やかに進行することを見出した。本法により得られるジヒドロキナゾリンアルカロイドは、様々な生物活性を持つことが知られている重要な含窒素複素環化合物であり、本法は多様な誘導体合成に利用できることから非常に有用である。また、本反応によって得られた、トリフルオロエタノールがハロアミン化合物を活性化できるという知見は多くの反応に利用し得るため非常に意義深い。 また、既に報告している新規オキサゾール合成法の応用として取り組んでいる、2006年に単離された強力な細胞毒性を持つ19員環マクロライドであるレイオデライドAの全合成研究において大きな進捗があった。すなわち、開発した手法を利用したオキサゾールの効率合成を経て、LeiodolideAの13位メチル基のα体とβ体の両ジアステレオマーの合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主な研究実施計画として、1)アミナールを利用する複素環合成、2)オキサゾール合成法を利用したLeiodolideAの全合成に取り組んでいるが、1)アミナールを利用する複素環合成研究実績の項で示したように、アミナールの転移反応による2環式アミジン合成について、トリフルオロエタノールを用いることで様々なケトン由来のアミナールに適用できるという新たな知見を得ることに成功した。一方で、当初計画していたオキサゾールのワンポット合成は現在のところ良い手法を開発できておらず課題として残っている。2)のオキサゾール合成法を利用したLeiodolide Aの全合成では、Leiodolide A自体の立体構造が決定されていないが、今回2つの候補化合物がジアステレオマーの合成に成功したことにより、研究は大きく進展したといえる。よって達成度としては、おおむね良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
強力な細胞毒性を持つ19員環マクロライド、Leiodolide Aの全合成研究を進めており、25年度は、24年度に完結しなかった計画について繰越申請に従い研究を遂行する。すなわち、これまでにLeiodolide Aの提唱構造をもとに候補化合物である13位メチル基のα体とβ体の2つの立体異性体を合成したが、いずれの化合物も報告されているスペクトルデータと一致しないという結果を得ているが、各種スペクトル測定を行い、合成品が提出構造を満たすものであると確認するとともに、提唱構造で誤っている可能性のある個所を推測した。本年度は、新たな候補化合物の合成を完結し、Leiodolide Aの構造を明らかとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究の推進方策で記したように、平成24年度に、Leiodolide Aの全合成研究を行い、その提唱構造をもとに候補化合物2つの合成を達成した。しかし、いずれの化合物も報告されているスペクトルデータと一致しなかった。現在、データの解析・検証により得られた予測をもとに合成を行っており、研究費は合成に必要な試薬の経費に充てる。
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Research Products
(20 results)