2012 Fiscal Year Annual Research Report
三価の超原子価臭素ハイパー脱離基を活用したシクロペンテニルカチオン発生反応の開発
Project/Area Number |
23790012
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
宮本 和範 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (40403696)
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Keywords | 脱離能 / 臭素 / 超原子価 / ビニルカチオン / ハイパー脱離基 |
Research Abstract |
研究期間全体の目標として設定した、「シクロペンテニルカチオンの発生」を、三価の超原子価臭素化合物シクロペンテニルブロマンを活用することによって実現することができた。カルボカチオンの基本的な一群であるビニルカチオンの中で、最後まで性質が明らかにされずに残されていた、五員環ビニルカチオンの存在がはじめて証明された点、また、その反応性を詳細に解明することに成功したという点において、本課題研究は有機化学において重要な貢献をしたと考えられる。 今年度は、UVスペクトルを用いた反応速度測定を基本としたシクロペンテニルブロマンの熱分解反応の反応機構の解明を中心に研究を実施した。すなわち、反応速度が基質の濃度や温度にどのように依存するかを明らかにし、SN1型の単分子分解機構が合理的であることを明らかにした。さらに、発生することが明らかとなった、シクロペンテニルカチオンの反応性について、分解生成物を精査することにより解明した。同時に分子軌道計算を行うことにより、実験結果をよく再現することができた。 研究全体を通した大きな副産物として、三価の超原子価臭素ハイパー脱離基の脱離能についての理解が深まったことが挙げられる。すなわち、対応する同族の三価のヨウ素脱離基よりも臭素置換基の脱離能が遥かに上回ることが明らかとなりつつある。この知見を活用すると、従来困難であった反応が進行するかどうかを具体的に予測できるようになると期待できる。現在我々は、一層不安定なフェニルカチオンが発生する反応を見出しつつある。 以上のように、研究期間内に本研究の目的を達成することに成功し、予想を上回る成果を挙げる事ができた。
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