2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23790016
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
小西 英之 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (20565618)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ボロン酸 / 共有結合 / 触媒 / 基質認識 |
Research Abstract |
ボロン酸とアルコールより生成するボロン酸エステルに対し、エステル形成に用いたアルコールとは異なる種類のアルコールを室温にて添加したところ、エステル交換反応が速やかに進行し、平衡状態に達することをNMR用いた解析により明らかにした。これは、本研究の根幹を成す概念である、共有結合の可逆的な形成および切断を用いてアルコール型基質の素早い捕捉および乖離が温和な条件下で起きていることを確認する結果であり、金属触媒と組み合わせての触媒反応が原理上可能であることを示すことができた。ボロン酸を含む新規配位子の合成について、アルキル側鎖を持ち有機溶媒に対する溶解性を向上させた数種類の2,2’-bipyridine型配位子、スペーサーを持たずボロン酸部位を直接2,2’-bipyridine骨格に組み込んだ配位子、ビスオキサゾリン環を有するBOX型配位子の合成を新たに行い、それらの合成ルートの確立を行った。また、salen型配位子に対してもボロン酸部位の導入を検討している。新たに合成した含ボロン酸配位子を、ZnやCu、Scのようなルイス酸と組み合わせて主にピルビン酸誘導体とヒドロキシ基含有芳香族化合物のFriedel-Crafts反応についての検討を行った。しかし、すでに報告されていたルイス酸触媒反応に対して、ルイス酸-含ボロン酸配位子の組み合わせの優位性を見出すことはできなかった。ただ、種々の検討を通して、含ボロン酸配位子の溶解性およびボロン酸近傍の置換基の構造が反応の進行に対して大きな影響を与えるという知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最初期にあたる、研究の実現可能性の確認については充分な知見を得ることができ、当初の予定を達成したと考えられる。これに続く新規含ボロン酸配位子の合成の段階については、予想に反して合成の困難が伴ったため、合成を達成した配位子の数は計画より少ないものとなった。新規配位子の合成と並行して検討を行った、金属触媒との組み合わせによる触媒的有機合成反応における新規配位子の評価について、既存の手法に対する金属-含ボロン酸配位子の大きな有用性を見出すには至ることができず、研究当初に設定した目的にはまだ達していない。しかし、ボロン酸エステルの可逆的な共有結合の形成と切断を触媒反応における強力な基質認識に利用するという概念自体が新規であり、難易度の高い研究であることを考えると、現時点における研究の達成度は予測の範囲を脱しないものである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、新規含ボロン酸配位子の設計・合成と、これらを金属触媒と組み合わせた場合の触媒反応における有用性(反応速度の向上、位置や立体選択性の変化等)を見出す検討を続けていく予定である。具体的には、まず合成途中または新規の含ボロン酸配位子の合成を完了し、骨格や特徴の大きく異なる様々な含ボロン酸配位子を合成する。そしてこれをルイス酸存在下、Friedel-Crafts反応に使用し、反応条件や位置選択性の変化について検討を行う。同様の検討をDiels-Alder反応等、種々の有機合成反応においても行う。万が一、金属-含ボロン酸配位子の組み合わせを用いての研究成果が上がらないようであれば、ルイス酸の使用をやめて含ボロン酸配位子自体をルイス塩基触媒として利用できるような反応を用い、共有結合を介するボロン酸有機触媒としての利用の可能性を検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は有機化学実験が中心であり、次年度も平成23年度と同様に研究室内または大学内の既存の施設を用いて研究の遂行が可能である。したがって、次年度の研究費の主な使用目的は、研究に必要な試薬や溶媒、その他消耗品類にかかる経費である。また、研究成果発表のための学会参加費用(旅費を含む)や、論文作成における英文校閲費用、論文老公にかかる費用として研究費を使用する計画である。また、平成23年度の研究費の一部を次年度に繰り越すことになったが、その額は請求額の3%未満と少額であり、またこれは次年度における消耗品費として使用する予定である。
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