2011 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロアラインの酸化還元変換による反応位置制御法の開発
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23790017
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
井川 貴詞 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (20453061)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アライン / ピリダイン / アライン前駆体 / シリル基 / スタニル基 / ヘテロ環合成 / イソキノリン / フッ素アニオン |
Research Abstract |
本申請研究は、ヘテロアライン(環内に三重結合を有するヘテロ芳香族化合物)への環状付加反応や求核付加反応などの反応位置を、制御するための新手法を開発することを目的としている。本年度は、ヘテロアラインの位置選択性に関する基礎的なデータを収集するために、特にピリダインの環化付加反応に関して位置選択性を制御する研究を行った。ピリダインの環化付加反応は一挙に新たな多環式ヘテロ環を合成できる魅力的な反応であるが、収率や位置選択性が低いことが問題である。そこで、3,4-ピリダインの2位の置換基を種々検討し、位置選択的に縮合ヘテロ環を構築することを目的として最初の研究を行なった。種々のピリダイン前駆体及びブチルフランのアセトニトリル溶液に、60 ℃でCsFを加えたところ、ピリダインが発生し、ピリダインとブチルフランとの間でDiels-Alder反応が進行した環化体を与えた。2位が無置換のピリダインを発生させた場合には、環化体の収率は極めて低く、また選択性は全く発現しなかった。一方、2位にシリル基やスタニル基を有する3,4-ピリダインを発生させた場合には、位置選択的に反応が進行することが分かった。フラン2位の置換基がアルキル基の場合、アルキル鎖が嵩高いほど選択性が高く、ピリジン環2位の置換基とフラン2位の置換基が離れたアンチ体を高選択的に与えた。一方、電子吸引基が、フラン2位に置換した場合も同様にアンチ環化体が選択的に得られることから、選択性は主に置換基どうしの立体反発によって生じているものと考えられる。また、シリル基やスタニル基のピリジン環上2位置換基効果によって環化体の収率が格段に向上することも明らかとなった。上記の反応によって、得られた環化体はルイス酸によって開環することでイソキノリンへと変換することができる。以上、本法はイソキノリン誘導体の新しい位置選択的合成法となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ピリダインの効率的発生法の開発我々は、合成容易かつ温和な条件においてピリダインを発生させることができる新規ピリダイン前駆体を開発することに成功した。2)ケイ素及びホウ素官能基を用いたピリダインの位置選択性制御法の開発上記発生法を利用して2-シリル又はスタニルピリダインを発生させ、通常位置選択性を発現させるのが極めて困難な、環化付加反応を位置選択的に行うことができた。上記の平成23年度の実施計画は順調に進行しており、既にピリダインの環化付加反応を用いた位置選択的なイソキノリン合成法を開発することに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は順調に実施計画が進行しているため、平成24年度も継続してその発展研究を行う((1))また、当初の計画通り(2)~(3)の研究を推進する。(1)昨年度の研究のまとめ及びその発展研究 2,3ピリダインン及びイソキノライン、キノライン、インドライン等その他ヘテロアラインについても平成23年度と同様の検討を行い、新たなヘテロ環の位置選択的構築法として開発する。(2)ピリダイン及びピリダイン N-オキシドの求核付加反応及び環状付加反応における位置選択性制御 例えば、2,3-ピリダインと2,3-ピリダインN-オキシドに対するアミンの求核付加及びフラン(又はピロール)とのDiels-Alder反応を詳細に検討し、位置選択性制御法を確立する。更に、3,4-ピリダイン等、その他のヘテロアラインに対しても同様に酸化還元状態を変えることによる位置選択性の自在制御法を確立する。(3)Heteroaryneの位置選択的環状付加反応を用いた天然物の全合成 上記の検討から得られた知見を生かし、heteroaryneの反応を多環式アルカロイドの合成に応用し、本法の実用性を示す。例えば、抗菌・抗炎症・中枢抑制・血圧降下など多様な作用を有するberberine 誘導体を位置選択的Diels-Alder反応を活用して全合成する。この手法では多様な誘導体を容易に作り分けることが可能である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、ヘテロアラインの中でも、ピリダインの環化付加反応に特化して研究を推進してきた。その為、予定よりも必要な試薬代がかからなかった。今年度はさらに多様なヘテロアライン及び反応に適用するため、新規に試薬を多く購入する必要がある。従って、昨年度からの繰越金は殆ど消耗品として使用する予定である。当初予定していた平成24年度の研究費については予定通りの使用計画である。以下にその概算を記載する。物品費:1,839,174円旅費:108,110円人件費・謝金:0円その他:0円
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Research Products
(13 results)