2011 Fiscal Year Research-status Report
電子求引的シクロペンタジエニドを特徴とする新規強力ルイス酸反応剤の開発
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23790027
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
坂井 健男 名城大学, 薬学部, 助教 (90583873)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 超強酸アニオン / 酸触媒 / 有機化学 |
Research Abstract |
シクロペンタジエンに強い電子求引基であるシアノ基を多く置換したペンタあるいはテトラシアノシクロペンタジエンは強酸性を示すことが知られている。23年度は、この超強酸の対アニオンに多様な機能を持たせることを目指し、テトラシアノシクロペンタジエニド類の効率的な合成法の開発を行った。 当初は、文献で報告されているWebsterの方法或いはSimmonsらの方法に従い合成を試みようとしたものの、Websterの方法は序盤に毒性の強いシアン化ナトリウムが大量副生する工程があり大量に立ち上げるには処理が面倒である点、Simmonsらの方法は収率と基質一般性に問題があり、様々な類縁体を大量に合成するには不向きであった。そこで、独自の効率的なテトラシアノシクロペンタジエニド類の合成法開発を目指した。 様々な検討の結果、ブロモ酢酸エステル類とテトラシアノチオフェンの混合テトラヒドロフラン溶液を水素化ナトリウムで処理することにより、最高73%という良好な収率でテトラシアノシクロペンタジエニド類の塩が単離可能であることを見出した。同手法は、嵩高いエステルやブロモアセトニトリルを用いた基質一般性の確認においてもおおむね5割前後の良好な収率でテトラシアノシクロペンタジエニド類の単離に成功している。 さらに、硝酸銀を用いてテトラシアノシクロペンタジエニド類の銀塩として、これに種々のアンモニウムハライド(或いは金属ハライド)とのイオン交換反応を行った。生じた難溶性のハロゲン化銀を沈殿として取り除くことで、様々なテトラシアノシクロペンタジエニド類の塩類を合成することに成功した。 以上のように、初年度は様々なテトラシアノシクロペンタジエニド類の様々な塩を合成する手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要通り、初年度は当初の計画に従いテトラシアノシクロペンタジエニド類の合成法開発を行い、文献で既に知られているWebsterの方法もしくはSimmonsらの方法よりも効率的な手法の確立に成功した。よって、初年度の結果としては、研究はおおむね順調に推移していると思う。まだ、本内容で論文執筆は行っていないものの、3月末に行われた日本薬学会において本研究成果を発表しており、次年度中には合成法の結果をまとめて論文執筆を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1.多種多様な置換基を持ったシクロペンタジエニド塩の合成と評価:23年度中に開発した新規テトラシアノシクロペンタジエニド類の合成法を利用して、様々な置換基を有するテトラシアノシクロペンタジエニド類を合成し、その強酸アニオンとしての強さを評価する。電子求引性あるいは嵩高さが異なる様々な置換基を導入した類縁体のピリジニウム塩を合成し、アセタールの加水分解反応の速度を比較することで、酸としての反応性の違いを評価したいと考えている。 また、最近、テトラシアノ(エトキシカルボニル)シクロペンタジエニド塩が水酸化ナトリウム水溶液で容易に加水分解され、エチルエステル部位が高収率でカルボン酸へと変換できることに気がついた。このカルボン酸を用いた縮合反応を開発すれば、さらに多種多様な類縁体合成へとつながるので、この研究も合わせて遂行したい。2.キラルな強酸アニオンを用いた不斉反応開発:上記に平行して、不斉源を導入したキラルなテトラシアノシクロペンタジエニド塩の開発を行う予定である。不斉補助基としては、8-(2-ナフチル)メンチルカルボニル基を第一選択肢とする。これは、ナフチル基とテトラシアノシクロペンタジエンがπ-π相互作用によって平行に向き、有効に不斉反応場を構築すると予想したためである。まずは、これらのピリジニウム塩を合成してグリセリンの不斉非対称アセタール化や不斉マイケル付加反応などへと応用していく予定である。 単なる不斉酸としての利用の他にも、トリアゾリウムやチアゾリウムとの塩も合成し、不斉ベンゾイン縮合の検討も推進していきたいと考えている。通常、不斉ベンゾイン縮合はカルベン側に不斉補助基を導入することが多く、カウンターアニオンは無視されがちであるが、実際は酸として原料や中間体の活性化に関与し得る。本研究を通じてその働きを明らかにすると共に新たな不斉ベンゾイン縮合を確立したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度は、少量実験においてテトラシアノシクロペンタジエニド類の新規合成法開発を行った。そのため、購入する試薬量が当初の予想よりも少なくて済み、予定していたよりも研究費の使用は少なくなってしまった結果、次年度へ金額を持ち越すことになった。24年度以降は推進方策に記したとおり、既に開発済みの新規合成法を用いて、これら類縁体の大量合成を行い反応性の検討を行う。そこで、比較的大型な器具や試薬の大量購入に研究費を使用する予定である。また、不斉反応の遂行などにともない、キラルカラムなどの高価な物品を購入する必要があるため、総じて判断すると初年度よりも必要な物品費は多くなる予定である。 また、これまでの結果を発表するため今年度は様々な学会へと参加して、本研究成果について議論を行いたい。そのため、出張費も本年度よりやや多くなると考えている。また、23年度の結果を論文執筆するための英文校正料などにも研究費を使用したい。
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