2012 Fiscal Year Research-status Report
電子求引的シクロペンタジエニドを特徴とする新規強力ルイス酸反応剤の開発
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23790027
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
坂井 健男 名城大学, 薬学部, 助教 (90583873)
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Keywords | 酸触媒 / テトラシアノシクロペンタジエニド / 相間移動 / アニオン |
Research Abstract |
シクロペンタジエンに強い電子求引基であるシアノ基を多く置換したペンタあるいはテトラシアノシクロペンタジエンは強酸性を示すことが知られている。当研究室ではH23年度にブロモ酢酸エステル類とテトラシアノチオフェンを水素化ナトリウムで処理することで、これらの塩を合成できるという知見を得ている。24年度は、ブロモ酢酸エステル類をスルホニル酢酸エステル類に変更すると大幅に収率が向上することを発見し、エステルだけでなく、ニトリル・アミド・フェニル・アルキルなど様々な官能基をもった同アニオンを高収率で得ることに成功した。また、ナトリウム塩のままカラムクロマトグラフィーを用いて精製できると言うことに気がついた。このおかげで、加水分解・脱水縮合によるエステル化やアミド化・還元・酸化・O-アルキル化などの様々な反応を行い、容易に目的物を単離精製することが出来るようになった。結果、テトラシアノシクロペンタジエニド上における多種多様な官能基化に成功した。本結果は、昨年度の複素環化学討論会にて口頭発表し、現在論文を執筆中である。 得られたテトラシアノシクロペンタジエニド塩は、全般的に脂溶性が高くアニオン型相間移動触媒としての応用が見込まれた。そこで、2級水酸基をTBS保護したものを加水分解させる実験を試みたところ、ジクロロメタン中に溶かしたシリルエーテルに1 M塩酸を加えて得られる2層の溶液に、同塩を加えたて反応を行ったところ、高収率で脱保護体を得ることが出来た。一方、塩酸を水に変えたり、塩を加えずに反応を行った場合は、全く反応が進行しなかった。 以上、本年度は、テトラシアノシクロペンタジエニド類の効率のよい合成法を開発したほか、同塩を用いた初歩的なアニオン型相間移動触媒反応の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要通り、初年度で開発した合成法をさらに効率化し、様々な官能基変換反応へと展開した。結果、比較的大きな学会での口頭発表を行うことが出来、論文の執筆に取りかかれるレベルにまで仕事を展開できた。また、初歩的ではあるが、酸触媒として応用が出来ることを見出しており、今後の反応開発に向けて弾みになる1年であった。よって、これまでのところ、研究はおおむね順調に推移していると思う。
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Strategy for Future Research Activity |
1.テトラシアノシクロペンタジエニド類を用いたアニオン型相間移動触媒反応の開発:概要に記したとおり、既に初歩的なレベルではあるものの、テトラシアノシクロペンタジエニド塩がアニオン型相間移動触媒として用いることができるという可能性について見出している。最終年度に当たる本年は、同塩をオキソニウム塩、イミニウム塩などの反応性の高いカチオンと組み合わせた、反応開発を行っていく。具体的にはエポキシの開環反応、向山アルドール反応、細見櫻井反応などへの応用を考えている。 2.新規不斉アニオン型相間移動触媒の開発:上記を開発した後には、アニオン側に不斉源を導入し、強酸アニオン側からイオン性結合を介して選択性を制御した不斉反応の開発にチャレンジする。現在、8-(2-ナフチル)メンチルエステルをはじめとした数種のキラルアニオンを既に合成しており、それらを用いた反応検討を行う。 3.人間型強酸触媒の開発とNanoKidとの対決:テトラシアノシクロペンタジエニルアニオンの特異な形に着目し、上記の反応開発とは別に、人間型強酸アニオンの開発を行う。同アニオンにアセタール環を導入すれば、人の顔に見える。これに酸性プロトンを有するカチオンを持たせると酸触媒として機能することが予想されるので、既に報告例がある人型分子Nanokidと対決させて頭部を加水分解させることをめざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は、初年度よりもテーマ展開が広がったため、テーマに参画する学生数が増大した。その結果、試薬代の他に、スターラーや実験用スタンドなどの器具類への投資が多くなり、前年度からの持ち越し分を含め予定通りの予算消化を行うことが出来た。25年度は、実験遂行に必要な、試薬・器具代を中心として、研究成果を発表するための英文校正料を5月頃に、成果の発表として学会参加費および出張費を11月および3月頃に使用する予定である。
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Research Products
(10 results)