2011 Fiscal Year Research-status Report
金属触媒を用いない革新的クロスカップリング反応によるビアリール新合成とその応用
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23790030
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
森本 功治 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, ポストドクトラルフェロー (10543952)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 酸化的カップリング / 超原子価ヨウ素 / ビアリール / チオフェン類 / 芳香族化合物 |
Research Abstract |
ビアリール類は、近年医薬や農薬関連分野において薬物活性発現に重要な役割を担う部分構造として注目度が高いだけでなく、そのオリゴマーやポリマーは、すでに材料科学分野で実用化されている。そのため有用な前駆体となる高度に官能基化されたビアリール化合物の高効率的な合成法の開発はこれからも重要な研究課題である。芳香環に芳香環をつなぐ手法としては、熊田・玉尾・コリューや鈴木・宮浦カップリングなどに代表されるような、遷移金属触媒を用いたクロスカップリング反応が汎用されており、現在も多くの研究者らにより活発に新たなクロスカップリング反応の研究開発が行われている。中でも官能基化を必要としない芳香族化合物の酸化的なクロスカップリング反応は、ハロゲン化やメタル化等の官能基化が予め必要な遷移金属を用いた結合形成反応に比べ、原料の構造修飾を必要としない直接的かつ簡便で、副産物の少ない有用な手法である。しかしながら酸化的手法を用いたクロスカップリング反応の場合、目的とするカップリング体の他にホモダイマーが副生したり、過剰酸化の問題があり、反応の制御が困難でこれまでに効果的な手法は報告されていなかった。 最近我々は、超原子価ヨウ素反応剤を用いたヘテロ芳香族化合物の酸化的クロスカップリング反応を報告している。今回我々が開発した反応の拡張として、ヨウ素反応剤を用いた様々な芳香族化合物への酸化的カップリングの開発を目的とし、検討した。その結果、ヘテロ芳香族化合物であるチオフェン類の効率的なカップリング反応並びに、電子豊富芳香族化合物のクロスカップリング反応へと展開することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビチオフェンの二量化体は、良質なπ共役系ポリマーの出発原料や天然物の母核となる有用な化合物群である。現在その合成には主にチオフェン類のハロゲン体やメタル体等の前駆体をあらかじめ調製して、遷移金属を用いてカップリングさせる方法が汎用されており、選択性が高い点で有用な方法である。しかしこれらの手法は、前駆体を予め調整する必要があるため多くの工程数を要する。我々は、3価の超原子価ヨウ素反応剤phenyliodine(III) bis(trifluoroacetate) (PIFA)を用いる、フェニルエーテル類やアルキルアレーン類の前駆体を必要としない酸化的カップリング反応をヘテロ芳香族化合物であるチオフェン類へと応用し、ビチオフェン類の合成に成功した。(Eur. J. Org. Chem., 2011, 6326-6334.)さらに我々が以前に報告している3価の超原子価ヨウ素反応剤であるPIFAを用いたアルキルアレーン類の新規クロスカップリング反応をフェニルエーテル類へと応用展開し、ヨウ素反応剤の構造を最適化することで副反応を抑えてさらに収率良く、効率的にクロスカップリングを進行させ、天然物類似の酸素官能基化ビアリール類を効率よく得ることに成功した。(Org. Lett., 2011, 13, 6208-6211.)
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Strategy for Future Research Activity |
ヘテロ芳香族ビアリール類は生理活性天然物や医薬品に多くみられる重要な化合物である。先に述べたように申請者らは最近、芳香族化合物の一電子酸化により生成する、ヘテロ芳香族化合物の超原子価ヨウ素中間体を経由する酸化的手法を用いた、遷移金属触媒を用いない世界で初めてのクロスカップリング反応を見出し、その手法を応用展開ている。今後申請者は、遷移金属触媒を一切用いないヘテロ芳香族化合物のさらなる網羅的な官能基化反応を検討する。ヘテロ芳香族化合物は酸化電位が非常に低く、酸化的カップリングを用いた反応の制御は非常に困難である。最近になってようやく遷移金属を触媒とする、インドール類やピロール類などの異種分子間カップリング反応が報告されたが、過剰な基質と高温条件が必要であり、酸化剤の他に遷移金属触媒の添加が必要であるといった課題がある。現在、ヘテロ芳香族化合物であるチオフェン類、ピロール類やインドール類において、ヨウ素反応剤を選択することにより、ヨードニウム中間体が収率よく生成することを確認している。今後、更にカルバゾール類、アゾール類のヨードニウム中間体を合成し、カップリング反応や求核種導入による官能基化反応へと展開し、本研究を完遂したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度、主なものとして、種々の消耗品代として160万円の6割は試薬代を予定している。また、ガラス器具や担体等は各々約30万円と考えている。研究成果の発表には論文1報当たり数万円が必要であり、別刷り代金とし約10万円を計画している。また、学会参加を通じて情報収集や成果発表を行う必要があることから、国内、海外旅費約20万円を計画している。
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Research Products
(12 results)