2011 Fiscal Year Research-status Report
N-アルコキシエナミンを利用するケトンのα位求核種導入反応の開発と不斉化への展開
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23790032
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
三好 哲也 神戸薬科大学, 薬学部, 助手 (10549992)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 極性転換反応 / ヘテロアリール化 / アルデヒド |
Research Abstract |
ヘテロ芳香環は多くの天然物や生理活性化合物に含まれており、ケトンのα位に直接ヘテロ芳香環を導入する反応は医薬品等の合成において有用であると考えられる。そこでまず、ケトンのα位へのヘテロ芳香環の導入を検討した。ヘテロ芳香環を有するアルミニウム試薬は対応するヘテロ芳香環をリチオ化した後、AlCl3を用いて調製した。基質である5-ノナノンにイソキサゾリジン存在下、チオフェンのアルミニウム試薬を加えたところ、目的のα-チエニルケトンが70%の収率で得られた。続いて、導入するヘテロ芳香環の置換基効果について検討した。2位に電子供与基であるメチル基や求引基であるクロロ基を有するチオフェンの導入についても効率よく反応は進行した。3位に置換基を有する3-メチルチオフェンを用いると5位で選択的に反応が進行することが明らかとなった。また、フラン類を用いても反応は円滑に進行し、それぞれ対応するα-フラニルケトンが良好な収率で得られた。一方、インドールやベンゾチオフェン、ベンゾフランを用いるとそれぞれの2位、および3位で反応の進行した位置異性体の混合物が得られることが分かった。また、この極性転換反応をアルデヒドに適用し、アルデヒドのα位へ求核的に置換基を導入する反応を検討した。まず、直鎖のアルデヒドであるヘキサナールのジクロロメタン溶液にイソキサゾリジン存在下、トリフェニルアルミニウムを加えたところ、期待通り目的の反応が進行し、2-フェニルヘキサナールが73%の収率で得られることが明らかになった。続いて、パラ位に電子供与基や電子求引基を有するフェニル基について検討すると、同様に目的のα-アリールヘキサナールがまずまずの収率で得られた。また、ヘテロ芳香環である2-メチルチオフェンのアルミニウム試薬を調製し、その反応を検討したところ、52%の収率で反応が進行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画において23年度に計画していた反応のうち、ケトンへのヘテロ芳香環の導入反応、および基質としてアルデヒドを用いる反応についてはある程度の成果を挙げられており、それぞれ国内の学会において発表を行っているが、ヘテロ原子求核剤を用いる極性転換反応は硫黄求核剤としてフェニルチオ基の導入については成功しているものの、酸素や窒素を求核剤とする反応は現在のところ進行しておらず、さらなる検討を要する。また、カルボアルミ化、ヒドロアルミ化により調整したアルミニウム試薬を用いる分子間反応についても種々条件の検討を行っているが目的の化合物が得られていない。このように、次年度計画の分子内反応への展開を考えていた反応での遅れがみられている。しかし、これらの反応も分子内の反応系では反応が進行することも考えられるため、次年度の計画に大きな影響を与える大きな遅れではないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に行ったヘテロアリール化についてインドールやベンゾチオフェンをも導入する際にリチオ化の進行する2位のみでなく、3位でも反応が進行する興味深い知見を得た。そこで、この反応の反応機構を調べ、位置選択的にこれらを導入できないか検討する。また、当初の計画に基づき分子内環化反応の検討を行う。23年度の結果よりチオール類はトリアルキルアルミニウムと反応してアルキルチオ基を有するアルミニウム試薬を形成し硫黄原子を導入できることが分かっており、分子内にチオールを有するケトンやアルデヒドを用いての反応を検討する。またアミノ基やアルコールのような求核部位を分子内に持つ基質を用いて様々なルイス酸との反応を検討していく。さらに、これまで行ったケトンのα位への様々な求核種の導入について、種々のキラルリガンドを検討し、不斉反応への展開を行う。トリアリールアルミニウムのような非常に嵩高い試薬では、リガンドと配位せず不斉が出ないことも予想されるので、アルミニウム試薬の置換基のうち2つを嵩の小さいアルキル基をもつものや、ロジウムなど他の金属を触媒として用いる系などについても検討を行う。また、キラルリガンドによる不斉化がうまく進行しなかった場合にも、不斉反応の触媒化は困難であると考えられるが、キラルなイソキサゾリジンを用いて反応を行うことで不斉化の達成を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は比較的安価な試薬類を用いての様々な求核種の導入反応を検討しており、試薬等の消耗品費、物品費が抑えられた。平成24年度の計画では不斉反応への展開において高価なキラルリガンドや金属触媒が必要になることが予想されたため、平成23年度における研究費をできる限り抑えて、平成24年度に回すことを考えた結果、次年度に使用する予定の研究費が生じた。このような状況下、研究費は多くを物品費に充てることになる。本研究では多くの種類のアルミニウム試薬を調製する必要があり、そのためには種々の有機金属試薬類や有機溶媒等の合成試薬、化合物の分離精製用のシリカゲルも必要不可欠である。これらの研究費はそれらの試薬類、様々なキラルリガンドや金属触媒に加え、エナンチオ過剰率を測定するためのキラルカラム等の消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)