2011 Fiscal Year Research-status Report
スピロボラートの分子技術を活用した水溶性超分子ポリマーの開発,医療への応用
Project/Area Number |
23790035
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
川幡 正俊 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (00441593)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 分子認識 / 構造・機能材料 / 自己組織化 / 合成化学 / ナノ材料 |
Research Abstract |
本計画は超分子ポリマーを利用した医療材料を含めた新規材料開発の一環として,既に報告している脂溶性超分子ポリマー「ツインボウル」に代わる,水溶性超分子ポリマー「クラウンエーテル様スピロボラートアニオンホスト」の合成と金属錯体,アンモニウム分子,との包接化合物の分子技術評価を行い,従来のクラウンエーテル,クリブタンドより強固なホスト-ゲスト複合体を形成させ,新規「イオノフォア」「キャリア」としてDDS へ展開することを目的としている.平成23年度はクラウンエーテル様スピロボラートアニオンの合成,アルカリ金属カチオンとの錯形成評価を計画していた.現在まで市販されている3,4位がベンジル基で保護されたフェノールとトシル基で保護されたテトラエチレングリコール保護体からビスカテコール前駆体を得,脱保護によりカテコールユニットを2つ持つテトラオール体へと誘導した.このテトラオール体と適切な金属水酸化物MOH(M=Na or K)を混ぜ,ポリオキシエチレン鎖の酸素原子の金属M(テンプレート)への配位により自己組織化前駆体を作り,そこにホウ酸を加えることで自発的に環化したクラウンエーテル様スピロボラート化合物を得ることを検討中であるが現在までのところ目的化合物が得られていない.テトラオール体のポリオキシエチレン鎖の鎖長が環化のしやすさに影響を与えることが考えるため,鎖長の異なったポリエチレングリコールの水酸基をトシル基で保護した化合物を合成した.また,テンプレートとして金属水酸化物以外に有機カチオンであるピリジニウムを用いての環化も検討したが現在までのところ,現在目的の環化体を得る条件の検討中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までのところ,最終合成標的物であるクラウンエーテル様スピロボラートアニオンの合成には至っていないが,その前段階までの合成には達成している.クラウンエーテル様スピロボラートアニオン前駆体であるテトラオール体は大変親水性があることから脱保護を目的とした接触還元による脱ベンジル化反応で完全に原料であるポリオキシエチレングリコールのダイトシル体を消失させなければその後の精製で純品を得ることが出来ないことが明らかになっている.また,クラウンエーテル様スピロボラートアニオン前駆体である種々のポリオキシエチレン鎖の異なった長さの前駆体の合成を行った.鍵となる最終段階の環化反応はカチオンとポリオキシエチレン部との弱いキレートによるテンプレート効果が大きく影響されると考えられ,また,疎水性相互作用を含めた疎溶媒効果なども密接に絡み合ってくることから精密な条件検討が必要と考えている.このことからポリオキシエチレン部とアルカリ金属イオンとの相互作用のみならず,ピリジニウムのようなカチオン-酸素原子との相互作用に加え,C-H---O相互作用も加えて働くような分子をテンプレート分子と合成することで環化反応が起こりやすくすることを目的にフェニレンをはさんだビピリジニウムも合成した.
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Strategy for Future Research Activity |
最終合成標的物であるクラウンエーテル様スピロボラートアニオンの合成を達成すべく,環化反応の条件検討を引き続き行う.そのためには前駆体であるテトラオール体とテンプレートの2種類の有力な候補化合物の選択とさらに精密な反応条件検討を行う.ポリオキシエチレン鎖の異なった前駆体であるテトラオール体を得るための合成法は昨年度までに見出していることから平成24年度はこれら化合物を必要に応じ種々合成し,また,モデル研究を活かしてこれら化合物にふさわしいテンプレートカチオン分子の合成も同時に行う.また,環化反応についても2分子で環化して精製するビススピロボラート骨格を有するより大きなアニオン性環状化合物の合成も視野に入れる.平成24年度の前半段階でスピロボラート環化体の合成に成功し,後半ではその機能に関する各種分光計による測定ならびに物性に関する分析測定を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は合成実験を主として研究を行ったため,種々の分析用試薬,消耗品の購入が控えられたため,次年度使用額117,118円が発生した.平成24年度にこの分を物品費として充てる予定である.
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