2011 Fiscal Year Research-status Report
神経幹細胞分化制御物質ライブラリーの構築と機能解明
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23790036
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
久保 美和 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (00330754)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 天然物化学 / 神経栄養因子 / PC12細胞 / 神経幹細胞 |
Research Abstract |
当該年度ではまず,我々が既に見出している数種の神経幹細胞新生化合物の共存下,マウス中枢神経幹細胞株であるMEB5細胞を長期間培養させて,分化,発育,ネットワーク形成促進,細胞死保護活性などを評価し,神経細胞の一生に関わる各ステージをコントロールできるか検討した。インドネシア産ショウガから見出したフェニルブタノイド二量体の共存下,MEB5細胞を培養したところ,新生作用も認められたが,コントロールと比較して,細胞数が多いことが形態学的な観察から分かった。MEB5細胞は上皮細胞成長因子(EGF)存在下では未分化のまま増殖し,EGFを除去すると約半数がアポトーシスを起こし,残りは神経細胞,アストロサイト,オリゴデンドロサイトの各細胞に分化することが知られている。よって,この化合物は,アポトーシスを抑制していると考えられる。神経細胞新生作用とアポトーシス抑制効果の因果関係については今後の検討課題である。また,神経変性疾患モデルマウスである嗅球摘出手術(OBX)マウスを用いたin vivo での効果について検討した。まず,ddYマウスの雄 8 ~ 9週齢に対して嗅球摘出手術を行い,術後15日目からフェニルブタノイド二量体を1日1回2週間摂取させた。術後22日目から新生された細胞を識別するマーカーとして用いられている BrdU を1日1回1週間腹腔内投与した。投与終了から2日後,脳を摘出して海馬領域の凍結切片を作製し,成熟神経細胞マーカーであるNeuNの抗体とBrdUの抗体を用いた蛍光多重免疫染色を行い,共焦点顕微鏡で観察し,一視野あたりの海馬歯状回顆粒細胞層に存在するBrdU-NeuN両陽性細胞をカウントした。その結果,コントロール群と比較して化合物投与群において陽性細胞数が有意に増加していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度は,フェニルブタノイド二量体の共存下,MEB5細胞を長期間培養させて,分化,発育,ネットワーク形成促進,細胞死保護活性などを評価し,神経細胞の一生に関わる各ステージをコントロールできるか検討した。フェニルブタノイド二量体が分化誘導促進,細胞死保護活性を示し,さらにvivoでの有効性を証明することができたことは大きく評価できる。しかし,当初の計画では,異なる活性作用を有する化合物を上手く組み合わせることによる相乗効果,あるいは単独の活性作用を濃度や時間などを調節することにより分化,発育,ネットワーク形成促進,細胞死保護などの神経細胞成育の各ステージを制御できるか検討する予定であった。培養条件の最適化に予想外に手間がかかったため,組合せによる効果について検討することが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
神経細胞成育の制御: 確立した培養法に従って,各濃度(0.01~10 μMくらい)に調製した化合物を別々あるいは組み合わせて,化合物共存下でMEB5細胞を長期間培養させる。細胞の分化,発育,ネットワーク形成促進,細胞死保護活性の各ステージ対して活性を示す濃度あるいは組合せを評価し,神経細胞の一連の成育に最適な条件を見つけ出す。神経幹細胞の分化機構の解明:神経幹細胞から神経細胞,アストロサイトへの分化に関わる遺伝子や転写因子の発現に対して化合物がどのように影響しているかについて,リアルタイムPCR法,Western blot法によりコントロールおよびBDNF, NGFと発現量および転写産物量を比較検討する。さらに,化合物共存下で培養したMEB5細胞からmRNAを取り出し,DNAマイクロアレイによる遺伝子解析を行い,どのような遺伝子が活性発現に関与しているのか調べる。神経細胞新生促進化合物ライブラリーの構築:我々が見出した神経突起伸展促進活性を持つ低分子化合物(約20種)をMEB5細胞を用いてスクリーニングし,神経細胞新生作用の有無を確認して,新たに神経細胞新生促進ライブラリーを構築する。また,所有している約250種の植物抽出物ライブラリーから,これまで精査していない塩基性画分つまりアルカロイド中心に活性成分研究を再度行う。MEB5細胞を用いて塩基性画分をスクリーニングし,活性を示した植物についてMEB5細胞の分化誘導を指標に活性画分から分化誘導活性成分を探索し,ライブラリーに追加する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額90円が生じたのは預金額の利息分であり,利息分は使用せず次年度に繰り越した。平成24年度は,神経幹細胞ライブラリーの構築に必要な溶媒,試薬,HPLCカラムなどの消耗品として使用する。また,活性化合物のスクリーニング,メカニズム解析,細胞の培養維持に必要な培養用試薬,培養用器具,電気泳動用試薬,western blot用試薬,リアルタイムPCR用試薬・器具,DNAマイクロアレイ用試薬・器具,MEB5細胞などに使用する計画である。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] Syntheses of structurally-simplified and fluorescently-labeled neovibsanin derivatives and analysis of their neurite outgrowth activity in PC12 cells2012
Author(s)
Imagawa, H.; Saijo, H.; Yamaguchi, H.; Maekawa, K.; Kurisaki, T.; Yamamoto, H.; Nishizawa, M.; Oda, M.; Kabura, M.; Nagahama, M.; Sakurai, J.; Kubo, M.; Nakai, M.; Fukuyama, Y.
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Journal Title
Bioorganic Medicinal Chemistry Letters
Volume: 22
Pages: 2089-2093
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Invasion Inhibitors of Human Fibrosarcoma HT 1080 Cells from the Rhizomes of Zingiber cassumunar: Structures of Phenylbutanoids, Cassumunols2011
Author(s)
Matsuda, H.; Nakamura, S.; Iwami, J.; Li, X.; Pongpiriyadacha, Y.; Nakai, M.; Kubo, M.; Fukuyama, Y.; Yoshikawa, M.
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Journal Title
Chemical&Pharmaceutical Bulletin
Volume: 59
Pages: 365-370
DOI
Peer Reviewed
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