2012 Fiscal Year Research-status Report
メカノケミカル反応を用いた薬物ナノCocrystalの調製及び製剤化
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23790056
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
深水 啓朗 日本大学, 薬学部, 准教授 (20366628)
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Keywords | cocrystal / ナノ粒子 / 混合粉砕 / 噴霧乾燥 |
Research Abstract |
本研究で提唱している医薬品の(ナノ)Cocrystal化技術は,原薬の化学構造を修飾することなく,分子レベルで原薬物性の改善ならびにチューニングが期待できるという利点を有している.今年度は,アセトアミノフェン(APAP)をモデル薬物とした探索スクリーニングについて,医薬品とCocrystalを形成するCoformer(一般的にカルボン酸等の医薬品添加剤が用いられる)の検討範囲を拡張し,さらに広範な組合せでスクリーニングを行うとともに,見出された新規Cocrystalの製剤学的な評価を行った. 医薬品添加剤として使用実績のあるものの中から,水溶性と汎用性を指標にして,新たなCoformer候補として約40種類を追加し,探索スクリーニングを実施した.その結果,新たにAPAPとベタイン(BTN,トリメチルグリシン)の間にモル比1:1の複合体形成が認められた.この複合体についてはメタノールとアセトンの混液から単結晶が調製できたことから,X線構造解析により新規Cocrystalの形成が確認された. 既に他の研究グループから報告されているAPAPとシュウ酸(OXA)のCocrystalについては,圧縮成形性(打錠特性)の改善に成功していることから,APAP-BTNのCocrystalについて比較検討した結果,APAP-OXAのCocrystalと同様または良好な成形性を示した.また,薬物の溶解挙動に関しても両Cocrystal間に差は認められず,成形された錠剤は速やかに崩壊し,薬物溶出が確認できた.さらなる利点としては,OXAが刺激性を有するのに対し,BTNは食品添加物としても用いられるように,刺激性がなく取扱いやすいことから,実用化の観点からAPAP-BTNは優れた医薬品Cocrystalであり,BTNは有望なCoformerとなり得ることが見出された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度,新規に見出されたCocrystal2種類に加え,新たに1種類のCocrystalを見出せたこと,また新規なCocrystalについては製剤学的な物性の改良が達成されたことから,計画通りに進展していると考えられる.今年度の計画目標にある「Cocrystalのナノ粒子化」については,噴霧乾燥法での検討が進行しており,既存の方法と比較しても高い効率でCocrystalを調製できることが明らかとなりつつある.引き続き,調製条件の検討と最適化を行うことにより,Cocrystalの粒子設計が可能になると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23~24年度に得られた結果を基にして,新規に見出されたCocrystalを噴霧乾燥法で調製する.名古屋市立大学大学院・薬学研究科(尾関哲也教授)との連携が進んでおり,装置および研究員(卒業研究生)も確保できていることから,Cocrystalの調製条件と製剤学的な物性改善の評価について,さらに詳細な検討を行う. ①Cocrystalの粒子設計:原薬APAPで認められている4種類(うち1種類は既知)のCocrystalそれぞれについて,試料濃度,溶媒,噴霧速度,乾燥温度および通風量といった噴霧乾燥法による操作条件の最適化を行う.また,粉体特性(粒度分布や流動性)に着目し,調製時の条件が各パラメータに与える影響について検討する.また,噴霧乾燥法におけるCocrystal形成のメカニズムを明らかとするために,微小液滴モデルの作成および観察,振動分光法を利用した評価を試みる. ②Cocrystalの製剤学的評価:Cocrystalの医薬品製剤化を想定し,得られた物性の改善効果を安定に担持するための処方検討を行う.現時点では保持担体としてポリマー類の添加について予備試験が進行しているので,担体中に分散したCocrystalの分子状態について評価し,Cocrystalの物理的な安定性と薬物の溶出性が確保される適当な組合せが見出され次第,最適化の検討に進む.また,製剤の製造工程ならびに保存中における安定性を予測するために,加速試験あるいは苛酷試験条件で安定性試験を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,卒業研究生6名と協力して研究を進めることができたので,当初の計画通りに進行した.そのため,平成23年度に震災等の影響により生じた繰越額と同程度(176,138円)が繰り越された.平成25年度は本学から4名の卒研生に加え,名市大において1名の卒研生が研究を行い,新規Cocrystalの調製に関する条件検討ならびに製剤学的な物性の改善に関する評価を行うので,物品費として800,000円程度を予定している.また,今年度までに得られた成果を公表するため,学会に参加する費用として300,000円,英文校正等の投稿にともなう費用として100,000円程度が見込まれる.付記事項として,今年度は本学において担当している学生実習との兼ね合いにより,予定していた国際学会への参加が困難な状況なので,別の国内学会に振り替えて成果を公表する予定である.また,その中から名古屋市立大学との研究打ち合わせに関する旅費を支出する予定である.
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