熱力学的考察に基づくプロトン共役薬物トランスポーターの基質親和性制御機構の解明

2013 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 23790060
• Research Institution: Toho University
• Principal Investigator: 下野 和実 東邦大学, 薬学部, 准教授 (30415187)
• Keywords: 熱力学量 / 薬物輸送担体 / 分子認識 / 相互作用エネルギー / 無細胞タンパク質合成系

Research Abstract

本研究は，プロトン共役薬物輸送担体において，基質輸送の本質である“基質の結合親和性の制御機構”を熱力学的観点から解明することを目的とする．昨年度までに，YdgR，EmrEでは結合親和性および駆動力のpH依存性は異なり，pHにより駆動力が変化することを見いだしている．さらにEmrEにおいて，変異体による解析から，Glu14は関与せず，Glu25が，基質結合を駆動するエネルギー変化に若干ではあるが関与していることが示唆された．そこで本年度は，駆動するエネルギー変化に主として寄与しているアミノ酸残基を同定するために，無細胞タンパク質合成系を利用してD84N,H110F変異体の調製を試みた．D84N変異体は野生型と同程度の合成量であり，熱量測定には十分な量であった．一方，H110F変異体は，野生型の1/5程度であったが，熱量測定が可能な量であった．現在，等温滴定型熱量測定の準備とともにE25Q/D84N２重変異体の調製も進めている．
また本年度は，薬物輸送担体の熱力学量について統一的に解釈するために，Na+共役輸送担体とチャネル様輸送担体の試料調製にも着手した．Na+/モノカルボン酸共輸送担体(SMCT)の試料調製では，無細胞タンパク質合成系による合成を試みたが，その合成量は5 μg/1 mL反応液と微量であり，熱量計を用いた機能解析に至らなかった．現在，収量を増大させるために，N末タグの変更を含む合成方法の検討中である．チャネル様輸送担体（銅輸送担体，CTR1）の試料調製では，高濃度の界面活性剤と脂質共存下で無細胞タンパク質合成を行い，可溶性画分として合成できた．本方法で合成，精製した試料は，Blue-Native PAGEおよび分子間架橋剤による検討から，３量体を保持していることが示唆され，その収量は0.1 mg/1 mL反応液であり，熱量測定可能な量であった．

Research Products

• [Journal Article] A common variant of leucine-rich repeat containing 16A (LRRC16A) gene is associated with gout susceptibility (2014)
  • Author(s): Sakiyama, M., Matsuo, H., Shimizu, S., Chiba, T., Nakayama, A., Takada, Y., Nakamura, T., Takada, T., Morita, E., Naito, M., Wakai, K., Inoue, H., Tatsukawa, S., Sato, J., Shimono, K., Makino, T., Satoh, T., Suzuki, H., Kanai, Y., Hamajima, N., Sakurai, Y., Ichida, K., Shimizu, T., Shinomiya, N
  • Journal Title: Human Cell Volume: 27(1) Pages: 1-4
  • DOI: 10.1007/s13577-013-0081-8
  • Peer Reviewed
• [Presentation] アポトーシスを誘導する核酸誘導体の濃縮型核酸輸送担体による輸送
  • Author(s): 下野和実，福田恭大，丸山晴美，田母神淳，紙谷浩之，奈良敏文，宮内正二
  • Organizer: 第8回トランスポーター研究会年会
  • Place of Presentation: 熊本大学薬学部（熊本市）
• [Presentation] 等温滴定型熱量計による多剤輸送担体EmrEの基質結合様式の解析
  • Author(s): 下野和実，森喜郎，奈良敏文，染谷友美，白水美香子，横山茂之，宮内正二
  • Organizer: 第51回日本生物物理学会年会
  • Place of Presentation: 国立京都国際会館（京都市）
• [Presentation] 白金錯体抗がん薬を輸送するヒト銅トランスポーター（hCTR1）の無細胞膜タンパク質合成系を利用した大量合成
  • Author(s): 下野和実，水谷賢人，池本友寛，小丸明日香，染谷友美，白水美香子，横山茂之，宮内正二
  • Organizer: 日本薬学会第134年会
  • Place of Presentation: 熊本市総合体育館（熊本市）
• [Book] オプトジェネティックスー光工学と遺伝学による行動制御技術の最前線― (2013)
  • Author(s): 下野和実
  • Total Pages: 288 (45-54)
  • Publisher: 株式会社エヌティーエス