2011 Fiscal Year Research-status Report
がんの診断及びフォトダイナミック治療同時遂行を目指した次世代型光感受性薬剤の開発
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23790063
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
神野 伸一郎 独立行政法人理化学研究所, 複数分子イメージング研究チーム, 研究員 (20537237)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 |
Research Abstract |
申請者がオリジナルで開発したアミノベンゾピラノキサンテン系(ABPX)をがんの光線的力学療法剤における光感受性薬剤として応用する際,リード化合物以外に多くの誘導体を準備しておくことは重要である.従って,従来のABPX01と比べ,高い蛍光強度並びに内部蛍光量子収率を有する新規ABPX誘導体の創製を行なった.まず誘導体の分子設計にあたり,温度と粘度に伴うABPX01の蛍光強度の影響を調べたところ、高粘度及び低温度で蛍光強度が増加したことより,分子内運動の抑制が、蛍光強度に重要な役割を担っていることが示唆された.そこで,ABPX01の蛍光団の構造的な剛直性を高める目的で,窒素部位にジュロリジン様構造を導入したABPX101,ABPX102及びABPX103を新規に設計,合成した.得られた各ABPX誘導体の希薄溶液中での分光学的特性を検討したところABPX101は4.3倍,ABPX102は3.1倍,ABPX103は5倍の内部蛍光量子収率を示し,ABPX01と比べ,いずれの誘導体も高い蛍光強度及び内部量子収率を有していた.一方,誘導体間でのモル吸光係数はほとんど変化しなかったことから,蛍光団部位の窒素部位の構造的な剛直化,即ち分子内運動の抑制は,蛍光放射過程には関与せず,無輻射失活速度を低下させることで,これら新規誘導体の蛍光特性の向上に関与することが示唆された.続いて,ABPX101-103のコロイド凝集体を合成し,それぞれの蛍光特性を調べたところ,いずれの誘導体も良好な蛍光強度を有していた.上記の結果より,蛍光団の窒素部位をジュロリジン様構造へ変換しても凝集状態で良好な蛍光を有することが分かり,いずれの化合物も従来のABPX01と比べ,有用な光感受性薬剤となることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は,新規ABPX誘導体の合成並びにそれらの光感受性について検討する予定であった.しかしながら,リード化合物のABPX01より優れた蛍光特性を有するにABPXの誘導化研究において,新たな分子設計の指針を確立するのに予定より長期間を要した.研究実績の概要で述べたように,試行錯誤を繰り返し,確立した分子設計指針を基に,現在,様々な新規誘導体の合成を行っている.それらの光感受性試験には,多種類の候補化合物が揃い次第,速やかに行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
新規ABPX誘導体の光感受性と濃度依存性,即ちに凝集誘起光感受性を検証する.続いてin vitroにおいてがん細胞の死滅がおこるかについて検討し,正常細胞と比較することで,抗腫瘍効果を評価する.またin vivoではがんモデル動物を用いて抗腫瘍効果を評価する.続いて,ABPXのナノ粒子を目指し, 微小なシリカ及び金属イオン粒子内部に,ABPX分子を1個~数万個内封及び固定化する.合成した,ABPXナノ粒子の光感受性をがん細胞を用いて検証し,内封したABPX濃度と光感受性について定量的に評価し,薬剤送達濃度の制御について考察する.続いてがん細胞の発現分子については,各種抗体やペプチドを選択し,これらを粒子表面に化学修飾し,薬剤のがん部位への選択性を向上させる.続いてこれらのABPXナノ粒子をモデル動物に投与し,その撮像実験をin vivo蛍光イメージング装置を用いて行う.続いてがん部位へレーザーの照射により,抗腫瘍効果を検証するとともに,ABPX送達濃度と治療効果について,蛍光イメージング装置で検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費として1,950千円を計上する.その内容は,消耗品として1,500千円、国内旅費として各年間300千円,その他の経費として各年間150千円である.具体的な研究費の使用計画については以下の通りである消耗品費 薬品(合成用有機試薬やシランカップリング剤等),実験用ガラス器具,分取クロマト用カラム,実験動物及び飼育費,活性酸素測定用キットの費用に充てる予定である.国内旅費 各年度3度の国内学会参加及び測定への出張に充てる予定である.その他 論文校閲の費用に充てる予定である.
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Research Products
(12 results)