2012 Fiscal Year Annual Research Report
がんの診断及びフォトダイナミック治療同時遂行を目指した次世代型光感受性薬剤の開発
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23790063
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
神野 伸一郎 独立行政法人理化学研究所, 複数分子イメージング研究チーム, 研究員 (20537237)
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Keywords | 光感受性薬剤 |
Research Abstract |
ガンのフォトダイナミック治療法(PDT)は,光感受性薬剤(PS)とレーザー光によって引き起こされる光化学反応を利用し,ガン組織中に活性酸素を発生させ,その力によってがん組織を死滅させるもので, 外科的治療や化学的治療に比べ低侵襲性であるため,患者のQOLを配慮した治療法として近年注目されている.一方,PDTに利用されるPSの最大の問題点は,ガンに集積したPSの濃度が高くなることで分子同士が互いに凝集し,光感受性や蛍光性などの光機能性が著しく低下することである.上記の課題を踏まえ,報告者は,独自の分子設計に基づき,π電子拡張型色素のアミノベンゾピラノキサンテン系(ABPX)色素の合成に成功し,ABPXが凝集状態で蛍光を有する凝集誘起発光増強特性を示すことを発見した.そこでABPXをPSとして応用する上で,様々な溶液中での化学種の構造同定と光機能性との関連性を,実験並びに計算化学的な実験手法を用いて詳細に精査した結果,ABPXは溶液中のプロトン濃度に応答し,複数の分子構造へ瞬時に変化し,その中でキサンテン環の窒素部位がプロトン化されたジカチオン型構造が高い光感受性と赤色の蛍光発光することを明らかにした.加えて,ジカチオン型構造は,塩化物イオンなどのアニオン種とイオン性の会合体を形成することで,凝集状態で高い光機能性を維持するといったメカニズムを提起した.また,更なる光感受性や蛍光特性の向上を目指し誘導化研究を進め,計20種類の新規ABPX誘導体の合成を行い,70%以上の極めて高い発光効率を有する誘導体の創出に成功した.またいずれの誘導体も高い光感受性を有し,水を始めとした多様な溶媒に対して幅広い溶解性と光安定性を示した.上記の結果より,ABPXはPSの有用な候補化合物であることが明らかとなった.
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Research Products
(8 results)