2011 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫系におけるエピジェネティック制御機構の解明
Project/Area Number |
23790073
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古橋 寛史 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (60545432)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 自然免疫 / エピジェネティクス / 遺伝子発現制御 |
Research Abstract |
獲得免疫系を持たない昆虫などの生物においても、感染刺激に対する適応反応、すなわち免疫「記憶」機構の存在が示唆されており、発生において「細胞記憶」を担うエピジェネティック制御因子群が、このような自然免疫「記憶/適応」に関与する可能性が考えられる。本研究では、シンプルかつ高等生物種間で非常によく保存された自然免疫系を持つショウジョウバエモデルを用いて、腸管自然免疫系による感染防御、感染ダメージ修復、および免疫寛容システムに関与するエピジェネティック制御因子群を迅速かつ効率的に探索する。そして、その作用機序を解明することで、自然免疫系におけるエピジェネティック制御の普遍原理に迫る。 ショウジョウバエ個体においてRNAi、および過剰発現を誘導できるトランスジェニック系統を利用し、エピジェネティック制御因子群に的を絞ったスクリーニングを現在進めている。経口感染に用いる病原性細菌として、多剤耐性菌の存在などで医学/免疫学上重要な研究対象であり、またその病原性等について比較的よく解析されている緑膿菌を一例として用いた。すでに数種のエピジェネティック制御因子群についてスクリーニングを行い、特定のクロマチン修飾に関わる因子群が緑膿菌感染に対する抵抗性/感受性に影響することを見出した。また、この特定のクロマチン修飾レベルを腸管上皮幹細胞/芽細胞において人為的に操作することで、経口感染によって侵入した緑膿菌の増殖が抑えられることを明らかにした。さらに、その作用機序を解明する為に、感染刺激に応答した遺伝子発現のマイクロアレイ解析を行なった。その結果、この特定のクロマチン修飾レベルの操作により、特定の抗菌ペプチドや、感染によって誘導される活性酸素の毒性除去に関わる因子群、さらに器官修復に必須な細胞増殖関連因子群など、腸管の恒常性維持に寄与すると考えられる遺伝子群の有意な発現上昇が観られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、遺伝学的スクリーニングは未だ完了していないが、すでに特定のクロマチン修飾に関わる因子群が緑膿菌感染に対する抵抗性/感受性に影響することを見出している。また、これらの因子について、腸管自然免疫系による感染防御、感染ダメージ修復への関与と、その作用メカニズムについて順調に解析が進んでいる。以上のことから、交付申請書に記載した23年度の目標はおおむね達成出来たといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、当初の計画通り、23年度に見出した緑膿菌感染に対する腸管免疫系に関与すると考えられるエピジェネティック制御因子群の作用機構について解析をさらに進展させる。具体的には、エピジェネティック制御の標的と考えられる遺伝子群の候補を既にいくつか見出しているので、それらに関してショウジョウバエ個体を用いた遺伝学的解析を行ないたい。また、それらの候補遺伝子座におけるエピジェネティック制御の実体を明らかにする為に、クロマチン修飾状態についてもクロマチン免疫沈降法により解析する予定である。なお、交付申請書に記載した24年度計画の通り、常在細菌叢の定着・維持における免疫寛容制御機構に関わるエピジェネティック制御因子についてもスクリーニングに着手したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度に見出した緑膿菌感染に対する腸管免疫系に関与すると考えられるエピジェネティック制御因子群の作用機構について解析を進展させる上で、各種マーカー/レポーター解析、クロマチン免疫沈降実験等々に必要な抗体、生化学/分子生物学実験試薬等の消耗品購入の為に主に使用する。また、学会等での成果発表に関わる支出についても、交付申請書に記載した通り予定している。
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