2012 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫系におけるエピジェネティック制御機構の解明
Project/Area Number |
23790073
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古橋 寛史 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (60545432)
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Keywords | エピジェネティクス / 遺伝子発現制御 |
Research Abstract |
獲得免疫系を持たない昆虫などの生物においても、感染刺激に対する適応反応、すなわち免疫「記憶」機構の存在が示唆されており、発生において「細胞記憶」を担うエピジェネティック制御因子群が、このような自然免疫「記憶/適応」に関与する可能性が考えられる。本研究では、シンプルかつ高等生物種間で非常によく保存された自然免疫系を持つショウジョウバエモデルを用いて、腸管自然免疫系による感染防御、感染ダメージ修復、および免疫寛容システムに関与するエピジェネティック制御因子群を迅速かつ効率的に探索する。そして、その作用機序を解明することで、自然免疫系におけるエピジェネティック制御の普遍原理に迫ることを目的とした。 ショウジョウバエ個体においてRNAi、および過剰発現を誘導できるトランスジェニック系統を利用し、エピジェネティック制御因子群に的を絞った探索を行った。また、経口感染に用いる病原性細菌として、多剤耐性菌の存在などで医学/免疫学上重要な研究対象であり、その病原性等について比較的よく解析されている緑膿菌を一例として用いた。すでに数種のエピジェネティック制御因子群についてテストし、特定の染色体修飾に関わる因子群が緑膿菌感染に対する抵抗性/感受性に影響することを見出した。また、腸管幹細胞において特異的な染色体修飾を人為的に減弱することで、ストレス応答遺伝子群の発現亢進が観られた。さらに、この特異的な染色体修飾の減弱により、短期的には細菌感染・ストレスに対する抵抗性の上昇が観られるものの、長期的には寿命短縮に繋がる現象が引き起こされることを示唆する結果が得られている。これらのことから、腸管上皮幹細胞における特異的なエピジェネティック修飾がストレス応答・恒常性維持機構の適切な制御に寄与している可能性が考えられた。
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Research Products
(3 results)