2011 Fiscal Year Research-status Report
抗-ヒストンH1ミモトープ抗体は免疫寛容を誘導する医薬品になるか?
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23790094
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
島田 弥生 城西国際大学, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (70439024)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 免疫抑制剤 / 抗体医薬 |
Research Abstract |
抗-ヒストンH1ミモトープモノクローナル抗体(SSV mAb)が免疫寛容を誘導する医薬品になりうるかどうかを評価し、その作用メカニズムを解明することを目的としている。 平成23年度に実施を計画した研究について、以下に成果を記述した。1、心移植拒絶モデルにおけるSSV mAbの免疫寛容誘導能力の評価:心移植拒絶モデルに投与するために必要な10 mgのSSV mAbを精製した。SSV mAbを精製する間にシャム群の評価を行った。シャム群には、移植後0、2、4、6日に生理食塩水を筋肉注射で投与した。移植後10日目までに全ての移植心が拒絶された。心移植拒絶モデルとして順当な結果が得られた。SSV mAbについては現在評価中である。2、SSV mAbが作用する免疫細胞の同定:SSV mAbについて、CD3刺激によるT細胞増殖に対する抑制活性を評価した。その結果、SSV mAbはT細胞の増殖を抑制しなかった。従って、SSV mAbはT細胞受容体刺激によるT細胞の活性化を抑制する能力がないと推定された。SSV mAbがMLRを抑制した際、T細胞活性化の指標となるIL-2の産生を有意に抑制しなかったことからも、同様のことが推定された。SSV mAbは、現在免疫抑制剤として広く使用されているカルシニューリン阻害剤とは異なる作用で免疫反応を抑制することから、新しいタイプの免疫抑制剤になる可能性がある。次に、リポ多糖(LPS)刺激による樹状細胞の成熟に対する抑制活性を評価した。その結果、SSV mAbはMHC-class IIの発現を抑制した。SSV mAbは樹状細胞の成熟を抑制することで、免疫反応を抑制する可能性がある。3、SSV mAbが免疫細胞のシグナル伝達やサイトカイン産生に与える影響の解析:まだ実施していない。平成24年度に実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SSV mAbのマウスMLR抑制活性を起点に、作用メカニズムの解析を進める予定だった。しかし、SSV mAbがマウスMLR抑制活性を発揮する頻度が低いことが明らかになった。そのため、ハイブリドーマおよび抗体の変質を疑った。ハイブリドーマのリクローニングや抗体の品質チェックを行った。問題がないことを確認するのに大きな時間を割いた。 ラットMLRを試したところ、SSV mAbがMLR抑制活性を発揮する頻度がマウスよりも高くなった。そこで、その後の研究にはラットを使用することに変更した。 ようやく研究を開始できる状態になるまでに約半年を費やした。その後は、大きな問題はなく研究を進めることができたが、最初の遅れが響き、現時点における研究の進度は、計画よりも数ヶ月程度遅れている。平成24年度は平成23年度と比べると研究計画にゆとりがあるため、この遅れは十分挽回できると考える。 研究の遅れのきっかけとなったSSV mAbのMLR抑制活性のムラは、SSV mAbが直接T細胞の活性化を抑制せず、樹状細胞の成熟を抑制することで間接的にT細胞の活性化を抑制する作用メカニズムに起因する可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
臓器移植拒絶モデルにおけるSSV mAbの免疫寛容誘導能力の評価については、現在、移植心の生着日数を測定している。近いうちに評価を終える予定である。 平成23年度に実施を計画したが、研究の遅れにより実施できていない研究に取り組む。SSV mAbがLPS刺激による樹状細胞の成熟を抑制する結果が得られているが、まだ実験回数が少ない。実験回数を増やして結果の信頼性を向上させる。その後、LPS刺激に伴う樹状細胞のシグナル伝達やサイトカイン産生に、SSV mAbが与える影響を解析する。シグナル伝達の解析では、ERK、JNK、p38のリン酸化を測定する。サイトカイン産生の解析では、IL-6、IL-12、TNF-αを測定する。 次に、当初から平成24年度に実施を計画している、SSV mAbが認識する表面抗原の同定に取り組む。LPS刺激した樹状細胞の細胞表面タンパク質をビオチンで標識し、アビジンカラムを使って細胞表面タンパク質を取得する。得られた細胞表面タンパク質を二次元電気泳動で分離し、ウェスタンブロット解析によりSSV mAbと反応する抗原スポットを明らかにする。この抗原スポットを質量分析して、タンパク質を同定する。プライマリー樹状細胞は数が少ないので、抗原を同定するのに十分な量のタンパク質が得られない可能性がある。その場合、サイトカインによって骨髄細胞から分化させた樹状細胞を用いる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に実施を計画したが、研究の遅れにより実施できていない研究がある。それらの研究に使用する物品の一部をまだ購入していない。平成23年度に請求した研究費のうち、次年度に使用する予定の研究費は、それらの未購入物品に使用する。 平成24年度に請求する研究費は、SSV mAbが認識する抗原の同定に使用する。
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Research Products
(2 results)