2011 Fiscal Year Research-status Report
STAT5標的遺伝子による真性赤血球増加症発症機構の解析
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23790096
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
多胡 めぐみ 慶應義塾大学, 薬学部, 講師 (30445192)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 慢性骨髄増殖性腫瘍 / JAK2V617F変異体 / STAT5 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
慢性骨髄増殖性腫瘍の原因遺伝子として同定されたチロシンキナーゼJAK2の点変異体 (V617F)は、強力な癌遺伝子である。しかしながら、JAK2の点変異が慢性骨髄増殖性腫瘍の発症へと至る分子機構は不明である。これまでに、私達はJAK2V617F変異体が転写因子STAT5の恒常的な活性化を誘導することを見出した。興味深いことに、STAT5をノックダウンすると、JAK2V617F変異体発現細胞はアポトーシスの表現形を示し、ヌードマウスにおける腫瘍形成が有意に抑制され、生存日数の延長が観察された。これらの結果より、STAT5の標的遺伝子がJAK2V617F変異体による癌化シグナルの実行因子として機能する可能性が強く示唆された。本研究では、JAK2V617F変異体の細胞癌化シグナルにおいて不可欠な役割を担うSTAT5の標的遺伝子群を包括的に解析し、JAK2V617F変異体による発癌シグナルの全貌を理解することを目的とした。これまでにDNAアレイを行い、JAK2V617F変異体により活性化されたSTAT5を介して発現が誘導される遺伝子として、セリン・スレオニンキナーゼPim1や転写因子c-Mycおよびその標的遺伝子であるポリアミン合成酵素 Ornithine decarboxylase (ODC)を同定した。Pim1はJAK2V617F変異体発現細胞の生存に必要であることが明らかになった。また、c-MycはJAK2V617F変異体発現細胞の生存や増殖に重要であることを見出した。さらに、ODC阻害剤DFMOがJAK2V617F変異体発現細胞の増殖を抑制し、in vivoにおいても腫瘍形成を抑制することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時において、平成23年度に、(1)DNAアレイ法によりJAK2変異体によりSTAT5依存的に発現誘導される遺伝子群を同定し、(2)同定遺伝子の発現機構を解析すること、および同定遺伝子の機能を解析するための(3)同定遺伝子群の発現系およびノックダウン系を確立することを計画していた。現在、Pimとc-Mycに関しては、既に発現系・ノックダウン系を作製することに成功し、平成24年度の予定であった同定遺伝子の機能解析や分子機構の解析まで研究が進んでいる。しかしながら、STAT5の標的遺伝子として同定できた遺伝子は他にも多数存在し、今後、これらの解析を進める必要がある。よって、全体的に考えると、現在までの研究の進行状況は概ね計画通りであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、PimがJAK2V617F変異体発現細胞の生存に必要であることは明らかになったが、その分子機構は不明な点が多い。リン酸化プロテオーム解析を用いて、Pimの基質を網羅的に同定することにより、Pimを介したJAK2V617F変異体のシグナル伝達経路を明らかにしていくことを計画している。また、c-Myc、Pim以外のDNAアレイによって同定されたAK2V617F変異体の下流で、STAT5依存的に発現が誘導される遺伝子群の発現機構および機能解析を進めることにより、JAK2V617F変異体の発がん誘導機構の全貌を明らかにしていく予定である。さらに、JAK2 V617F点変異を有するヒト真性赤血球増加症患者由来巨核球細胞HELを用いて、同定した遺伝子群の機能を解析することにより、慢性骨髄増殖性腫瘍との関連性を解明することをめざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、各遺伝子や特異的shRNAを導入した細胞株を樹立し、シグナル伝達機構の解析を行う。また、ヌードマウスを用いた腫瘍形成能を検討することを計画している。これらを考慮し、分子生物学的試薬代として40万円、動物購入・飼育代として40万円を使用することを計画している。また、同定分子の特異的抗体の購入のために、一般試薬代として30万円を使用することを計画している。解析にはすべて培養細胞を用いるため、プラスチック器具代および細胞培養用試薬代として40 万円を使用する予定である。
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