2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞内脂肪滴の生理機能:ステロイドホルモン産生を中心に
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23790098
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
山口 智広 昭和大学, 薬学部, 准教授 (50347530)
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Keywords | 脂質代謝 / 脂肪滴 |
Research Abstract |
脂肪滴は中性脂肪がリン脂質一重膜に覆われた細胞小器官であり、全身の脂質代謝に重要な役割を果たしている。その制御には脂肪滴の表面に存在するタンパク質が関与している。私はステロイド産生細胞であるマウスライディッヒ細胞株(MLTC-1)細胞における脂肪滴の解析を進めており、これまでにMLTC-1の脂肪滴には多量のステロイド合成酵素が存在することを見出した。また黄体形成ホルモン(LH)でステロイド産生を刺激した時に、脂肪滴の形態が変化し、小型化することを見出した。本年度はまず電子顕微鏡により脂肪滴を観察し、ホルモン合成刺激時に小型化・分散していること、さらに脂肪滴周囲に小胞体膜が接合していることを明らかとした。次に、MLTC-1と同様の現象が他のステロイド産生細胞でも証明できるのか、アルドステロンを産生するヒト副腎皮質由来H295R細胞を用いて検討を行った。H295R細胞の脂肪滴はMLTC-1に比べて発達しておらず、脂質を付加した培養条件を検討することで脂肪滴の観察が可能となった。多くの細胞の脂肪滴表面には、Perilipinファミリータンパクが存在している。検討の結果H295R細胞の脂肪滴にはPerilipin-2が選択的に局在することがわかった。ステロイド合成酵素である17bHSD、3bHSD をH295Rで発現させるとMLTC-1同様に脂肪滴に局在した。しかし、MLTC-1で見られたようなホルモン合成刺激における脂肪滴の形態変化はH295R細胞では観察できなかった。脂肪滴の形態変化は限られた細胞で起こる現象である可能性がある。また、研究計画に基づき、脂肪滴の形態変化と生理機能の関連について、ヒト間葉系幹細胞、ヒト好中球細胞を用いて解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では様々な細胞における脂肪滴の形態変化と生理機能の関連を明らかにすることを目的としている。中心となるステロイド産生細胞の解析については、脂肪滴タンパク質の網羅的解析や、脂肪滴の電子顕微鏡観察を遂行し、形態変化を起こすシグナル伝達経路が解明されつつある。また本年度はMLTC-1ライディッヒ細胞以外の細胞として副腎H295Rの解析に着手した。研究計画に沿い、好中球HL-60や脂肪細胞hMSCについても解析を始めており、Perilipin3など形態変化に関わるタンパク質の候補が出てきている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画に沿い、ステロイド産生細胞以外の細胞の脂肪滴を中心として検討を進める。すでに好中球HL-60や脂肪細胞hMSCについて解析を行っており、これらの脂肪滴形成を制御する因子や、形態変化を起こすシグナル伝達系経路を解明し、生理機能との関連について検討する。MLTC-1細胞の研究については、申請の最終年度として研究成果を発表することを計画する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は消耗品費を中心とする。主に培養細胞を用いた実験のため、培養細胞試薬(細胞、培地、血清、ディッシュ類)が多く、抗体、蛍光染色用試薬、タンパク質実験試薬、遺伝子組み換え実験試薬の費用として使用する。また顕微鏡観察における画像解析や、研究成果発表用の費用として使用する。旅費としては研究成果発表と打ち合わせのための国内旅費を申請する。
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Research Products
(4 results)