2011 Fiscal Year Research-status Report
線維素溶解系因子uPARによる炎症性骨破壊発症制御機構の解明
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23790107
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
菅野 陽介 同志社女子大学, 薬学部, 助教 (40416178)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 炎症性骨破壊 / 骨芽細胞 / 破骨細胞 / uPAR / LPS |
Research Abstract |
近年、歯周病や関節炎などによる炎症が、過度の骨吸収を引き起こすことで、骨粗鬆症や関節リウマチのような病態をきたすことが明らかになっている。しかしながら炎症が引き起こす骨破壊進行の詳細なメカニズムは依然として明らかになっておらず、高齢化社会が進む日本においてその病因究明は急務である。現在までに、線維素溶解系因子uPARが炎症性骨破壊に関与している事を発見しており(LPSによる炎症性骨破壊における線維素溶解系因子uPARの重要性;平成21年度 文部科学省科学研究費補助金)、uPARが炎症よって誘導される骨吸収において重要な制御因子である可能性を示唆している。uPARの関与する炎症性骨吸収メカニズムを明らかにすることが、骨粗鬆症や関節リウマチのような病態の新しい治療法開発の礎になると考えられる。本研究は、線維素溶解系因子uPARが炎症性骨破壊の発症をどのように制御しているのかを解明する事を目的とし研究を開始した。平成23年度は、LPSによってuPARの発現がどのように変化し、LPSが誘導する破骨細胞分化及び細胞内シグナル伝達にuPAR、uPAR結合蛋白質がどのように関与しているかを解析した。その結果、LPSの刺激によって誘導される破骨細胞分化が進むにつれてuPARの発現は増加することを発見した。また、uPARは、integrinやLRPなどのuPAR結合蛋白質を介して、LPSが誘導する細胞内シグナルを調節し、破骨細胞への分化を制御していることを明らかにした。これらの結果より、炎症によって発現が惹起されたuPARは、炎症による骨破壊を制御していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、1.LPSによるuPARの発現変化の解析、2.LPSが誘導する細胞内シグナル伝達におけるuPARの影響、3.LPSが誘導する破骨細胞分化におけるuPARとuPAR結合蛋白質との相互作用による影響について明らかにすることを目標として研究を開始した。最初に、LPSの刺激により破骨前駆細胞が破骨細胞へ分化する過程において、uPARの発現がどのように変化していくかをRT-PCR法及びウエスタンブロット法にて解析した。その結果、LPSの刺激によって誘導される破骨細胞への分化が進むにつれてuPARの発現が増加することを明らかにした。次に、uPARと結合するintegrin及びLRPに着目し、LPSが誘導する細胞内シグナル伝達及び破骨細胞への分化に与える影響を調べた。integrinの活性化を阻害するペプチド及び中和抗体を添加すると、LPSが誘導する細胞内シグナル伝達及び破骨細胞の分化が抑制されることを確認した。また、siRNA法にてLRPの発現を抑制するとLPSによって誘導される細胞内シグナル伝達及び破骨細胞の分化が抑制されることを確認した。これらの結果より、integrinやLRPなどのuPAR結合蛋白質は、LPSが誘導する細胞内シグナル伝達を調節し、破骨細胞への分化を制御していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
1.骨芽細胞が制御する破骨細胞分化におけるuPARの影響 骨芽細胞が制御している破骨細胞分化におけるuPARの役割を明らかにするために、野生型マウス及びuPAR遺伝子欠損マウスのカルバリアより骨芽細胞を初代培養し、破骨前駆細胞であるRaw264.7 cellsと共培養を行う。それぞれの培養系にLPS及び炎症性サイトカインを添加し、破骨細胞分化能の違いを解析する予定である。2.LPS及び炎症性サイトカインの刺激により骨芽細胞が産生する破骨細胞分化誘導因子産生におけるuPARの役割 野生型マウス及びuPAR遺伝子欠損マウス由来骨芽細胞を用いて、LPS及び炎症性サイトカインの刺激によって誘導されるRANKLなどの破骨細胞分化誘導因子の発現量の違いを解析する。誘導された破骨細胞分化誘導因子の発現量は、定量的RT-PCR法及びウエスタンブロット法を用いて、mRNA及び蛋白質レベルで解析する。また、その産生はどのようなシグナル伝達経路を介して行われているのかを解析し、uPARがどのように破骨細胞分化誘導因子の産生に影響を及ぼしているのかを明らかにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度においては、研究試薬(抗体\200000、siRNA用試薬\200000、培養培地\50000、細胞分化用試薬\200000、RT-PCR用試薬\50000、阻害剤\50000計\750000)、組織ガラス器具(プレパラート, コーティングプレパラート等、計\100000)、培養器具(培養皿等、計\300000)、研究成果報告旅費(\50000)等の経費が必要である。
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