2011 Fiscal Year Research-status Report
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23790122
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
近藤 嘉高 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (20507397)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 代謝 / 生化学 / 酵素 / 動物 / ペントースリン酸経路 |
Research Abstract |
ペントースリン酸経路は、グルコース6-リン酸をグリセルアルデヒド 3-リン酸へと代謝、NADPHおよび核酸の原料供給を担う。興味深いことに、古くからグルコースを起点にグルコノラクトン、グルコン酸を経由、主経路へと合流する副経路の存在が示唆されてきた。しかし、動物における副経路の代謝酵素は、未だ同定されておらず、その存在は証明されていない。本研究では、ペントースリン酸副経路の全容を明らかにするため、動物における同経路の代謝物及び代謝酵素を同定し、副経路における各酵素の機能を解明する。 本年度は、ペントースリン酸副経路の代謝物であるグルコノラクトン、グルコン酸のHPLCを用いた新規定量法の開発を試みた。しかし、両基質の試料調製法を検討した結果、比較的安定と考えられた過塩素酸下においても安定性が悪く、水存在下における分別定量は困難であった。次に、8週齢SMP30/GNLノックアウトマウスの肝臓における代謝物をメタボローム解析により網羅的に定量した。同マウスにおけるペントースリン酸(副)経路のD-グルコース-6-リン酸およびグルコン酸、6-ホスホグルコン酸、リブロース-5-リン酸量は、野生型マウスと比べて有意な差は認められなかった。 また、マウス肝臓におけるグルコン酸キナーゼ活性を測定した結果、肝臓可溶性分画において用量依存的に同活性の増加が認められた。そこで、ヒトおよびマウスの肝臓から抽出したmRNAを用いてcDNAを合成し、大腸菌におけるグルコン酸キナーゼと高い相同性を有する機能未知遺伝子の全長を挟むプライマーを用いてPCRした後、同遺伝子をサブクローニングした。さらに、配列を確認後、同遺伝子を発現ベクターに組込み、6×Hisタグ融合タンパク質として発現することを確認した。以上の結果から、ヒトおよびマウスにおいてグルコン酸キナーゼが存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
グルコノラクトンおよびグルコン酸の分別定量は、その物性の点から極めて困難であり、測定にはより一層の工夫が必要とされる。しかし、ヒトおよびマウスにおけるグルコン酸キナーゼ遺伝子のクローニングに成功した。現在、グルコン酸キナーゼ遺伝子の組換えタンパク質を用いて、発現誘導条件および可溶化条件、酵素活性等を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトおよびマウスにおけるグルコン酸キナーゼ組換えタンパク質を用いて、酵素活性(2価金属イオン要求性、補酵素要求性、pH、反応温度、基質特異性、Km、Vmax)を求める。 また、上記の組換えタンパク質をウサギに免疫して、ポリクローナル抗体を作製する。RT-PCR法および作製抗体を用いた免疫組織化学染色により、マウスにおける各代謝酵素の発現組織及び発現部位を明らかにする。また、発現組織及び培養細胞を用いて、細胞分画法及び細胞免疫蛍光染色法により、各代謝酵素の細胞内における局在部位を特定する。 生体内における各代謝物及び代謝酵素の動態を明らかにするため、マウス肝細胞株に各代謝酵素(グルコースデヒドロゲナーゼ、SMP30/GNL、グルコン酸キナーゼ)遺伝子に対するsiRNAを導入したノックダウン細胞を作製する。また、各代謝酵素遺伝子を過剰発現した細胞も作製する。高グルコースおよび各基質を添加した培地にて各細胞を培養後、各種代謝物を定量する。また、同ノックダウン細胞及び過剰発現細胞において、ペントースリン酸(副)経路の代謝酵素発現量をリアルタイムPCR法により、細胞内NADPH濃度をHPLC法により測定し、副経路における酵素の変動が代謝に及ぼす影響を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
HPLCのカラムやバイアル等の消耗品及びメンテナンス、プライマー、ポリメラーゼ、制限酵素、プラスミドベクター、siRNA導入及びトランスフェクションの試薬、リアルタイムPCRプローブや測定キット、マウス肝細胞の購入、抗体作製、その他チップやチューブ等消耗品に費用が必要となる。また、本研究の成果を学会発表するための旅費、論文発表するための投稿料が必要となる。
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