2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞内アダプター蛋白質Lnkの制御による多能性幹細胞からの造血幹細胞誘導
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23790123
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Research Institution | 独立行政法人医薬基盤研究所 |
Principal Investigator |
田代 克久 独立行政法人医薬基盤研究所, 創薬基盤研究部, 研究員 (30580138)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 分化誘導 |
Research Abstract |
胚性幹(ES)細胞や人工多能性幹(iPS)細胞を医療へ応用するには、幹細胞から高効率に目的細胞を誘導する技術の開発が必須である。特に、ES、iPS細胞から造血幹細胞を誘導することが可能となれば造血幹細胞移植の細胞ソースとしての利用が考えられる。そこで本研究では、造血幹細胞の増殖・機能の抑制因子であるLnkに着目し、Lnkを阻害するドミナントネガティブ変異体(DN-Lnk)遺伝子を導入することで、ES/iPS細胞から造血幹細胞への分化を試みることとした。まず、マウスES、iPS細胞、およびES細胞由来胚葉体(ES-EB)、iPS-EBにおいてLnkが発現していること、そしてその発現は血液細胞への分化能を有するFlk-1陽性細胞においても発現していることが明らかとなり、Lnkが血液細胞への分化過程において何らかの機能を有していることが示唆された。そこで次にDN-Lnk安定発現ES、iPS細胞を作製し、OP9細胞を用いて血液細胞への分化誘導を行った。その結果、コントロール株と比較し、DN-Lnk発現ES、iPS細胞は血液細胞が多く産生された。また、得られた血液細胞中に含まれる血液前駆細胞数もDN-Lnk発現ES、iPS細胞では増加していることが、メチルセルロースを用いたコロニーアッセイにて確認された。したがって、Lnkを阻害することによりES、iPS細胞から効率良く血液細胞を産生可能となることが明らかとなった。今後、得られた血液細胞中に造血幹細胞が含まれているかどうか検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでLnkを阻害することが、ES/iPSからの血液細胞への分化過程にどのような影響を及ぼすか不明であった。今年度、DN-Lnk遺伝子を用いてLnkを阻害することによりES、iPS細胞から血液細胞を効率良く産生できることを明らかにすることができたため、当所の目的をおおむね達成していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
DN Lnk遺伝子の導入により生成した血液細胞を免疫不全マウスへ移植する。移植16-20週間後、ES、iPS細胞由来の骨髄球系細胞・リンパ球系細胞がマウス体内に産生されていることをフローサイトメーターにより確認することにより、得られた血液細胞中に造血幹細胞が存在しているか否か検証する。また、Lnkの阻害によりiPS細胞から血液細胞の産生が増加するメカニズムの解明を試みる。具体的には、サイトカインシグナルに対する応答性や血液細胞自体の発生に関わる転写因子の発現等の解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大部分はES/iPS細胞用培地、コロニーアッセイ用培地、組換えサイトカイン、抗体等の消耗品や実験動物(マウス)の購入に使用する。その他、研究成果を発表する学会参加費やそれに伴う旅費、そして論文投稿料・掲載料等に使用する予定である。
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