2011 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質の特異的分解手法が切り拓く創薬化学の新カテゴリー
Project/Area Number |
23790125
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 稔 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (70526839)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 標的分子同定 / 神経変性疾患 / タンパク質ノックダウン |
Research Abstract |
申請者らが開発したタンパク質ノックダウン法は、ユビキチンリガーゼ(E3)と標的タンパク質の両方に結合する低分子により、生理的な条件下で特異的に標的タンパク質をユビキチン化・分解誘導する方法である。このタンパク質ノックダウン法を用いて、創薬化学に有用な2つの新しい手法、[1]単離操作を回避した生物活性低分子の標的タンパク質同定法、[2]異常凝集・蓄積型タンパク質の分解誘導による神経変性疾患の新治療戦略、の確立を本研究で目指している。[1]標的分子が未知である低分子とE3リガンドを連結した化合物を合成・細胞に処理し、プロテオーム解析することを計画していた。最初に、タンパク質ノックダウン法の標的タンパク質に対する特異性を向上させ、また一般性も確認した。この結果より、標的分子が未知である低分子を連結させた化合物は、標的タンパク質を特異的且つ一般性良く減少させることが期待され、本提案の基盤が整ったと考えられた。次に、標的タンパク質が既知の低分子とE3リガンドを連結した化合物を用いて、本研究のコンセプトを確認した。即ち、この連結化合物を細胞に処理し、二次元電気泳動の結果を解析したところ、コントロール群と比較して消失したスポットを確認した。消失したスポットを質量分析により解析したところ、標的タンパク質と同定された。以上の結果より、タンパク質ノックダウン法とプロテオーム解析を組み合わせることにより、標的タンパク質を実際に同定できた事例を示すことができたと考えている。[2]異常凝集・蓄積型タンパク質を特異的に認識するリガンドとE3リガンドを連結した化合物を用いて、神経変性疾患の異常タンパク質を特異的に減少させることを計画していた。この連結化合物を合成し、神経変性疾患原因タンパク質を遺伝子導入した細胞に処理したところ、この原因タンパク質量が変化することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[1]平成23年度計画であるコンセプト確認を達成した。即ち、標的タンパク質が既知の低分子とE3リガンドを連結した化合物を用いて、タンパク質ノックダウン法とプロテオーム解析を組み合わせることにより、標的タンパク質を実際に同定できた。更に平成24年度計画を前倒しをして、標的タンパク質が未知である1化合物を選定し、この低分子とE3リガンドをリンカーを介して連結した化合物を合成した。この際、リンカー長が分解誘導活性に影響を与えることが考えられた為、リンカー長を変更した3化合物を合成した。[2]連結化合物の設計・合成を完了した。また、神経変性疾患の原因タンパク質のプラスミド調製、遺伝子導入、安定細胞株の取得を完了した。次に、合成した連結化合物を神経変性疾患原因タンパク質を遺伝子導入した細胞に処理したところ、この原因タンパク質量が変化することまで確認することができた。以上、平成23年度計画の通りに概ね進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
[1]当初の計画通り、標的分子が未知である低分子とE3リガンドをリンカーを介して連結した化合物を細胞に処理し、プロテオーム解析を行う。コントロール群と比較して減少したタンパク質が確認されれば、このスポットを質量分析により同定する計画である。アフィニティークロマトグラフィー法と同様に、低分子の連結部位が活性に影響を与えると考えられる。そこで成功確率の向上を目指し、連結部位を変更した化合物も幾つか合成し、生物活性が保持された化合物を選定する。具体的な生物活性低分子としては、当研究室で継続的に展開しているサリドマイド類縁体、申請者が誘導化実績を持つ血管新生阻害活性を有する天然物pseurotin類、標的タンパク質が不明の抗アレルギー薬、当研究室で見出された抗ウイルス活性を有する化合物などが挙げられる。[2]神経変性疾患治療薬は、脳へ移行する性質が必要となる。脳移行性を高める工夫として、分子量低減に取り組むことを当初は計画していた。この前に、神経変性疾患原因タンパク質の量が変化したメカニズムを最初に確認したい。具体的には、タンパク質ノックダウン法が利用している、生体内のユビキチン-プロテアソーム系の関与を検証することから始めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を円滑に進行させるために、有機化学系および生物系の実験消耗品を購入する予定である。特に、プロテオーム解析には多くの実験消耗品が必要となると考えている。加えて、プロテオーム解析では微量のコンタミが問題になることがある。コンタミが課題となった場合、専用の実験器具を揃える必要があることも想定している。また、外部発表についても積極的に行っていきたいと考えており、そのための費用も計画している。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Development of small molecules that induce IAP-mediated ubiquitylation and proteasomal degradation of target proteins.2012
Author(s)
Mikihiko Naito, Keiichiro Okuhira, Nobumichi Ohoka, Norihito Shibata, Takayuki Hattori, Yukihiro Itoh, Minoru Ishikawa, Yuichi Hashimoto
Organizer
The Sixth International Conference SUMO, Ubiquitin, UBL Proteins: Implications for Human Diseases
Place of Presentation
Houston, USA
Year and Date
2012年2月9日
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