2012 Fiscal Year Research-status Report
多目的最適化と対話型最適化を利用した蛋白質-リガンドドッキングプログラムの開発
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23790137
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小田 彰史 金沢大学, 薬学系, 准教授 (50433511)
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Keywords | タンパク質-リガンドドッキング / 多目的最適化 / スコア関数 |
Research Abstract |
平成24年度は、前年度に引き続いてタンパク質-リガンドドッキングで作成されたポーズの評価にパレート最適解を用いたコンセンサススコア手法の構築および評価を行った。パレート最適解を用いたときの問題点である多数の偽陽性を排除する方法について、これまでは同時に用いるスコア関数の数の制限や選別に注目して開発してきたが、新たにligand-based drug design (LBDD) 手法とドッキングとを組み合わせることでポーズを絞り込む手法についてテストを行った。すなわち、化合物Aのドッキングポーズを選別する際に、活性のあることが知られている類縁化合物Bのドッキングポーズを利用する。たとえBの複合体構造が未知であったとしても、AとBは類似したポーズでドッキングを行うことが予想されるため、Aのポーズ集団とBのポーズ集団から重なる部分を抽出し、それを複合体構造の有力候補と見なす。これによってポーズの数を飛躍的に絞り込むことが可能であり、実際にいくつかの系において実験結果を再現するポーズが得られた。 また、ドッキングの際にリガンドの構造を効率的に生成するための配座探索手法についてもテストを行った。具体的には、分子シミュレーションを利用した配座探索手法の評価と、さらに二段階での配座生成法の実際の系への適用を行った。前者についてはdruglikeな系を中心にテストを行い、druglikeな分子に対してはほぼ常に妥当な配座を与える方策を見いだした。後者については配座探索が十分に行えないこともある環状化合物について、環の配座生成とそれ以外部分を含めた配座作成との二段階で配座探索を行い、そのような化合物に対しても効果的に配座探索を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では多目的最適化および対話型最適化のコンセプトを用いてタンパク質-リガンド複合体の予測構造を評価する方法の開発を目的としている。平成24年度までに、多目的最適化のためのスクリプトの作成を行っており、かつ対話的に予測構造を処理するための方策としてLBDDの手法を用いる技術を提案した。さらに開発した手法の実際の系に対する応用についても、新規抗がん剤の開発研究等が進んでいる。またこれら手法の網羅的評価についても行っており、いずれの点についてもおおむね当初の予定通り順調に進展している。 また、古典的分子力学計算に必須の力場パラメータの算出および評価についても必要に応じて適切に行っており、不足したパラメータを補っている。これらは研究の進展に応じて必要かどうかを判断するべき作業であったが、これらについても問題なく実行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までの結果を踏まえ、多目的最適化および対話型最適化を利用したドッキングの実際の系への適用を進めていく。新規抗がん剤の開発については現在進行中であるが、化合物展開の必要に応じてタンパク質-リガンドドッキングを行う。またドッキング手法のブラッシュアップについても取り組む予定である。本手法で重要となるのは多数得られたパレート最適解を絞り込んでいく過程であるが、平成24年度までに行ったLBDDを用いた方法以外についても考慮する。具体的には、分子シミュレーションによる安定性の評価などが解の絞り込みに使用できないか検討を行う。 これらドッキング手法そのものの開発だけではなく、手法開発に必要なツールの準備も引き続き行う。補酵素や非天然アミノ酸に続いて、従来医薬品に含有されていないことの多かった(したがって創薬プログラムにもパラメータの用意されていない)ホウ素などのパラメータの準備にも取り組む。また、アミノ酸変異の中間体のパラメータについても検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においては分子シミュレーションの比重が高まるため、高速に分子シミュレーションを行うことのできるGPGPUマシンの整備を行う。それに付随したソフトウェアやストレージの整備なども行う。得られた研究成果を公に報告するための学会発表および論文発表のための費用についても必要とする。
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Research Products
(10 results)