2011 Fiscal Year Research-status Report
アノマー位アルキル置換イミノ糖の不斉触媒的合成とその生物活性評価
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23790138
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
名取 良浩 東北薬科大学, 薬学部, 助教 (50584455)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | イミノ糖 / 創薬化学 / α-グルコシダーゼ阻害作用 / 糖尿病治療薬 / 触媒的不斉合成 |
Research Abstract |
申請書の研究目的では、「アノメリック位にアルキル基などの側鎖を導入したイミノ糖誘導体の合成方法を開発し、ライブラリー構築を可能にすることで各種糖鎖関連酵素の阻害作用に関する構造活性相関を検討し、創薬科学研究を行う。」と記載した。その際、イミノ糖の合成法として(1) 2回の不斉アリルアミノ化反応後、閉環メタセシスでピロリジン環を構築する経路 (経路1) (2) 不斉アリル化反応とクロスメタセシスにより得られるアリル炭酸エステルの立体選択的環化反応でピロリジン環を構築する経路 (経路2)の2種を提案している。経路1では、計画に沿ってC1位にアルキルを導入したD-およびL-アラビノース型のイミノフラノースを合成することができた。本合成経路では、検討予定のC1位に種々のアルキル基を導入した後、3工程を経てイミノ糖の合成が可能であったため、多くのイミノ糖誘導体の酵素阻害活性を測定することが可能であった。その結果、興味深いことにD糖よりもL糖のイミノ糖の方が強力なα-グルコシダーゼ阻害作用を示し、特にC1位をがブチル基で置換したL-アラビノイミノフラノースでは、α-グルコシダーゼ阻害作用をもつ市販の糖尿病治療薬と同等以上の活性をもつことが判明した。得られた結果をまとめて学術論文の投稿と、学会発表を行い、大きな反響を得ることができた。経路2では、ピロリジン環構築後、C2位に水酸基を持たない2-デオキシイミノ糖の合成が可能であった。そこで構造活性相関研究の一環として経路1で最も高い酵素阻害作用をもつことが判明した1-ブチルL-アラビノイミノフラノースの2-デオキシ体を調製し、その酵素阻害作用を測定を行った。その結果、α-グルコシダーゼ阻害作用は大幅に減弱し、C2位の水酸基が活性発現に重要であることが分かった。得られた結果は、学会発表を行い、大きな反響を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
経路1では、sp3炭素sp3炭素結合形成根岸カップリングによって、C1位のアルキル側鎖を導入する合成計画を立案したが、用いるアルキル亜鉛試薬によっては化学収率が低下することが懸念された。その場合、イミノ糖のライブラリーを予定通りに構築することが困難になると予想された。しかし、実際に種々のアルキル亜鉛試薬を用いてカップリング反応を行った結果、大幅な収率の低下を伴うことなく対応するアルキル側鎖を導入することが可能であったため、望みとするイミノ糖のサンプル調製を容易に行うことができた。なお、調製したイミノ糖誘導体のα-グルコシダーゼ阻害活性測定の結果、D体よりもL体の方が強力な阻害作用をもつことや市販のα-グルコシダーゼ阻害薬を大きく上回る活性を示したことなど、大変興味深い結果が得られた。また、本研究の修了までに行う予定であった、研究成果に関する学術論文の投稿と、学会での発表を既に達成しており、研究は順調に進展していると言える。また経路2では、鍵行程である立体選択的なピロリジン環構築において、合成計画では窒素原子は無保護の状態で反応を行う予定であった。しかし実際に本反応を行った結果、収率、立体選択性、共に満足のいく結果を得ることができなかった。そこで窒素原子の保護基を検討した結果、2-ニトロベンゼンスルホニル基で保護した場合、収率、立体選択性が共に向上し、望みとする環化生成物を高収率で得ることができた。本反応により得られた化合物からは2-デオキシイミノ糖の合成が可能であり、その酵素阻害の測定した。高い酵素阻害活性は見られなかったが、本研究にから得られた結果は、構造活性相関の解明の一助となった。
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Strategy for Future Research Activity |
経路1に関する今後の推進方策としては、これまでの研究でC1位のアルキル側鎖については、直鎖状の置換基の検討を終えた。そこで、今後はこれまでに得られた知見を基に、より高い酵素阻害活性を示すイミノ糖の合成を目指し、分岐したアルキル側鎖および水酸基やアリール基を含んだ側鎖をC1位に導入したイミノ糖の合成を計画している。また、C1位の立体化学および、C2位とC3位の水酸基の導入法を変更し、アラビノース型以外のC1-アルキルイミノフラノース誘導体の合成も可能と考えている。経路2に関しては、これまでの研究から2-デオキシイミノフラノースの合成を可能にしており、構造活性相関研究の助けとなった。また、イミノ糖合成の過程において高ジアステレオ選択性でビニル基が置換したピロリジン環を構築できることが分かった。そのため今後の推進方策としては、本合成法により得られた知見から、イミノ糖のみでなくピロリジン骨格をもつ種々の天然物および生理活性物質の合成に展開できると期待している。なお、イミノ糖合成における中間体からは、天然由来のグリコペプチドであるBulgecin類のアグリコン部であるBulgecinineの合成が可能と考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の実施においては、経路1,2共に金属錯体を触媒としたエナンチオ選択的およびジアステレオ選択的な反応を用いたイミノ糖誘導体の立体選択的な合成を目指している。そのためには、多くの金属錯体および不斉配位子が必要となる。そのため、消耗品費における合成用反応試薬に多くの研究経費を使用する予定である。また、今後もさらに本研究の成果を学会で発表することを目標としており、そのための旅費としても使用する予定である。なお、生物活性の測定は、他大学(富山大学付属病院薬剤部)で行うため、研究打合せ用の旅費も必要となると考えている。
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Research Products
(10 results)