2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23790139
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
根本 徹 北里大学, 薬学部, 助教 (40458766)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 医薬分子設計 / オピオイド / δ受容体 / 作動薬 / 生物活性物質 |
Research Abstract |
我々は、オピオイドδ受容体の詳細な役割の解明を目的として、in vivoにおける高選択的で高活性なδ作動薬の合成を試みている。以前に、δ選択性及び強いδ作動活性を有するSN-28を得たが、その皮下投与における鎮痛作用は弱いものであったため、中枢移行性を向上させるデザインを試みた結果、δ受容体高選択性及び強い鎮痛作用 (ED50 = 1.21 mg/kg (s.c.) ) を有するKNT-127を見出している。そこで、我々はKNT-127のさらなる活性向上のため、高選択的δ作動活性に最適な構造を見出す一環として、SN-28の構造活性相関を検討した。種々のSN-28誘導体を合成した結果、キノリノモルヒナンにおいて4位水酸基が高δ選択性に関与することが示された一方、3位水酸基を有する化合物は高いδ作動活性を有し、17位窒素置換基としてシクロプロピルメチル基を有するSN-11は非常に強いδ作動活性を示した(EC50 = 0.018 nM)。また、我々は、KNT-127の構造を基に構造活性相関を検討する一環として、KNT-127のキノリン部位に注目し、大きさや電子状態が異なる種々の置換基をキノリン環に導入した化合物を合成し、その活性の変化を検討することとした。本誘導体設計の際には、トップリスツリーの系統樹に示されている置換基を参考にした。トップリスツリーとは、特定の置換基の組み合わせを用いて、芳香環上の置換基を最適化する場合に用いられる系統樹である。具体的には、誘導体として、μ受容体拮抗薬であるナルトレキソンを出発物質に、塩素原子、フッ素原子、メチル基、メトキシ基等をキノリン部位の5-8位に導入した化合物を合成した。今後は、さらに誘導体を合成し、得られた知見を基に、高選択的高活性なδ作動薬を見出す予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、まず高選択的高活性なδ作動薬を得るために、SN-28の構造活性相関研究を行い、δ選択性または作動活性に必要な構造を検討した。KNT-127誘導体に関しても、すでに多くのキノリン誘導体を合成しており、オピオイド受容体結合試験を行っている。よって、平成24年度は、すでに得られた知見を基に化合物設計を行うため、さらに高活性なδ作動薬が得られる可能性があり、おおむね順調に進展していると考えられる。また、SN-28の構造活性相関に関しては、学会発表(国際学会含む)及び論文発表を行った。KNT-127誘導体においても、学会発表を行っており、平成24年度には論文発表を行う予定であり、研究成果としても順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基に、まずオピオイドδ受容体選択性及び親和性の向上に最適な置換基を見出すことを目的に、高δ選択性及び作動活性を有するKNT-127をリード化合物として、誘導体の設計、合成を行う。以前に申請書に記載した通りに、モルヒナン骨格でオピオイド受容体結合に必須と考えられる部位を変換することで、オピオイド受容体に対する影響を検討することとし、KNT-127誘導体の3位のフェノール性水酸基を取り除いた化合物や17位窒素置換基を変換した化合物等を合成し、オピオイドδ受容体に対する選択性及び親和性について評価する。また、平成23年度に合成した化合物の中で、4位水酸基を有するSN-28誘導体が高δ選択性及び作動活性を示したことを受け、3位の水酸基の代わりに4位に水酸基を有するKNT-127誘導体の合成及び受容体結合試験を行う。そして、合成した化合物の中で、高δ選択性及び親和性を示したものに関して、δ受容体作動活性及び拮抗作用についても検討する予定である。また、それらの結果を受け、オピオイドδ受容体作動活性に最適な置換基、構造を見出し、さらなる誘導体を合成する。高δ選択性及び高δ作動活性が確認された誘導体は、in vivoで鎮痛作用を調べ(酢酸ライジング試験)、非常に高いin vivo活性を有する高選択的δ作動薬が得られれば、鎮痛作用以外の薬理効果についても検討する予定である。さらに、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の予算で試薬、器具等の購入の際に誤差として余った32円、及び平成24年度の予算は、本研究の合成原料であるナルトレキソンの購入と反応に使用する試薬やガラス器具等の物品費とする。
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