2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23790139
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
根本 徹 北里大学, 薬学部, 助教 (40458766)
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Keywords | 医薬分子設計 / オピオイド / δ受容体 / 作動薬 / 生物活性物質 |
Research Abstract |
オピオイドδ受容体の詳細な役割の解明を目的として、in vivoにおいて高選択的で高活性なδ作動薬の合成を試みており、すでにδ受容体高選択性及び強い鎮痛作用 (ED50 = 1.2 mg/kg (s.c.) ) を有するKNT-127を見出している。そこで、本研究ではKNT-127のさらなる活性向上のため、まず高選択的δ作動活性に最適な構造を見出すこととし、KNT-127の構造活性相関研究を行うため、以下4つの新規誘導体について検討した。まず、δ選択性及び作動活性に関与していることが示唆されているキノリン環に着目し、キノリン環に種々の置換基を導入した化合物のオピオイド受容体結合試験を行った。その結果、キノリン環の5’位及び8’位に置換基を有すると、高δ親和性及び選択性を示し、特に8’位に水酸基を有するSYK-153は高δ親和性及び選択性を示した。次に、δ作動活性に必要なキノリン環の窒素原子の最適な位置を検討するため、キノリン環窒素原子がモルヒナン骨格の7位に結合した新規誘導体を合成した。3点目として、モルヒナン骨格の3位フェノール性水酸基の位置を変換または除去したキノリノモルヒナン誘導体を合成したところ、3位水酸基を有さないSYK-158が高δ選択性を示した。また、上記で得られた誘導体の中で、良好なδ受容体結合能及び選択性を示したものについては、現在δ作動活性について検討している。さらに4点目としては、オピオイド受容体結合能に大きく関与する17位窒素原子の置換基の変換を行ったところ、δ作動活性に対して17位窒素原子の電子密度が大きく関連していることが示された。これらの結果より、種々の新規誘導体の合成法が確立したと共に、キノリノモルヒナン骨格で重要と考えられる部位がどの程度δ作動活性に影響を与えているかを検討することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定通り、高選択的高活性なδ作動薬を得るために、KNT-127をリード化合物として構造活性相関研究を行い、δ選択性または作動活性に必要な構造を検討した。KNT-127誘導体に関しては、すでに多くの誘導体を合成しており、オピオイド受容体結合試験及び作動活性の評価を行っている。また、これらの誘導体の構造活性相関に関して、学会発表及び論文発表を行っており、さらに合成した化合物が良好な結果が示せば、平成25年度にも論文発表を行う予定である。しかし、その一方で、δ作動活性及び選択性両者において、十分に満足できるものは得られておらず、in vivoでの評価が行えていないため、計画よりもやや遅れている。今年度前半には、δ受容体の役割を明らかにできるような最適な選択性、活性を有する化合物を見出し、in vivo評価を行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23、24年度に得られた結果を基に、オピオイドδ受容体選択性及び作動活性の向上に最適な置換基を見出すことを目的に、高δ選択性及び作動活性を有するKNT-127をリード化合物として、誘導体の設計、合成を行う。まず、上記概要部で述べたキノリン環の窒素原子の位置を変換した新規誘導体やキノリン環の結合部位自体を変換した誘導体合成を行い、最適なキノリン環の位置を明らかにする予定である。また、平成23、24年度に引き続き、モルヒナン骨格でオピオイド受容体結合に必須と考えられる部位を変換することで、オピオイド受容体に対する影響を検討する。一般的に、モルヒナン骨格の17位窒素置換基、3位水酸基、ベンゼン環が受容体結合に大きく関わっているとされているが、本研究において、前者2つについては変換したものをすでに合成したため、次年度はモルヒナン骨格のベンゼン環自体の検討を行うため、キノリノモルヒナン骨格のベンゼン環を変換もしくは除去した誘導体についても合成を試みる。 そして、本研究で合成した化合物の中で、特に高δ選択性及び親和性を示したものに関して、δ受容体作動活性について検討する。また、それらの結果を受け、オピオイドδ受容体作動活性に最適な置換基、構造を検討する。高δ選択性及び高δ作動活性が確認された化合物は、in vivoで鎮痛作用を調べ(酢酸ライジング試験)、非常に高いin vivo活性を有する高選択的δ作動薬が得られれば、鎮痛作用以外の薬理効果についても検討する予定である。さらに、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の予算で試薬、器具等の購入の際に誤差として余った18円、及び平成25年度の予算は、本研究の合成原料であるナルトレキソンの購入と反応に使用する試薬やガラス器具等の物品費とする。
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