2011 Fiscal Year Research-status Report
新規微小管作用薬Plinabulinの創薬指向型分子機能研究
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23790143
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
山崎 有理 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (70459725)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 分子認識 / 医薬品化学 / がん / 生体分子 / 薬学 |
Research Abstract |
Plinabulinは、当研究室で創製されたジケトピペラジン骨格を有する強力な微小管作用薬である。本化合物は抗がん剤として米国などで臨床試験が進行中の医薬品候補化合物であるが、標的タンパク質であるチューブリンへの結合様式については未だ明らかではない。結合様式を明らかにできれば、分子認識に基づいた理論的なplinabulin類縁体の創薬研究が展開できる。そこで我々は、plinabulinの結合様式を解明することを目的として、plinabulinのケミカルプローブを合成し、光親和性標識の手法を用いて結合様式の解析を行うことにした。本年度は、plinabulinの構造活性相関研究を引き続き行った。また並行して、より効果的に結合様式の解析が行えるよう、新たなケミカルプローブとして、plinabulinの構造に光反応基である「ベンゾフェノン構造」とタグとして立体障害の少ない「アルキン構造」を導入した誘導体KPU-252を合成し、さらに、プローブにより光標識されたタンパク質断片を質量分析で簡便に同定できるよう、KPU-252の構造にBr原子を導入したケミカルプローブKPU-255も合成した。合成したケミカルプローブKPU-252とKPU-255の活性を評価したところ、両方の化合物において非常に高い殺細胞活性とチューブリンに対する親和性が確認された。そこで、これらのプローブを用いてチューブリン光親和性標識を行い、その後、光標識進行の確認と光標識蛋白質の釣り上げを目的としてビオチンアジドとのクリック反応を試みた。その結果、期待通り、光標識とクリック反応が進行したことが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題であるケミカルバイオロジー研究を効果的に進めるためには、その土台となるplinabulinの創薬化学的プロファイル(構造活性相関や生物活性)を把握しておくことが重要である。このことから、本年度も、plinabulinの構造活性相関研究を並行して進めた。すなわち、plinabulinのベンジリデン側と、その反対側のイミダゾール環5位を置換し、構造の最適化を行った (J. Med. Chem., 2012, 55, 1056-1071)。また、この構造活性相関で得られた高活性なベンゾフェノン誘導体KPU-105に着目し、KPU-105のベンゾフェノン部分の構造活性相関研究もさらに遂行した(論文投稿中)。さらに、これらの成果に基づき、より効果的に結合様式解析を行うことを目的として、新たなケミカルプローブであるKPU-252とKPU-255を合成した。新たに開発したプローブの活性評価を行ったところ、非常に高い活性が示された。そして、これらのプローブを用いてチューブリン光親和性標識を行い、その後、光標識進行の確認と光標識蛋白質の釣り上げを目的としてビオチンアジドとのクリック反応を試みたところ、光標識とクリック反応が期待通り進行したことが確認できた。以上の結果から、本課題研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
創薬化学研究としては、ベンゾフェノン構造を有するplinabulin誘導体の構造活性相関研究を行う。これまでの構造活性相関の成果として、活性を維持できる置換部位としてはベンゾフェノンの4位が寛容であることが示されたことから、今後は、4位を中心に、化学修飾可能な水酸基、アミノ基、チオール基を導入した誘導体の合成に取り組む。誘導体の活性を評価し、高活性な誘導体が得られれば、その構造を基にして、プロドラッグ、抗体複合体やケミカルプローブの開発へと展開していく予定である。Plinabulinの結合様式解析のためのケミカルバイオロジー研究については、前年度までに、アルキン構造を有するケミカルプローブKPU-252とKPU-255を合成し、光標識とクリック反応の進行が確認できた。今後は、アビジンビーズを用いて光標識された蛋白質を釣り上げ、酵素消化後、質量分析を行い、標識フラグメントを同定し、plinabulinの結合様式を示す予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、消耗品費として、誘導体やケミカルプローブ合成に必要な有機合成用試薬・各種アミノ酸試薬・蛍光試薬・合成用有機溶媒・HPLC用アセトニトリル・ガラス器具や、活性評価や光親和性標識に必要なチューブリン・生化学実験用試薬(電気泳動試薬、抗体など)・細胞培養試薬・プラスチック製品に70万程度を計画している。また、これらの研究成果の発表に要する旅費、及び通信料(サンプル送付)、論文別刷り代を予定した。旅費については、国内の学会(日本薬学会年会、ケミカルバイオロジー学会年会、がん分子標的治療学会学術集会など)で15万程度を予定している。また実験補助に対する謝金を5万円程度、その他サンプル郵送料、英文校正料や論文別刷り代を10万程度予定している。以上は、本研究課題における研究経費は研究を遂行する上で必須のものであり、妥当な積算根拠に基づいているものである。
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Research Products
(12 results)