2011 Fiscal Year Research-status Report
HIVおよびHTLVプロテアーゼを標的とした擬似対称型阻害剤の開発研究
Project/Area Number |
23790145
|
Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
日高 興士 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (30445960)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 分子設計 / 酵素 / 阻害剤 / HIVプロテアーゼ / HTLV-Iプロテアーゼ / 擬似対称型阻害剤 / 成人T細胞白血病 / HTLV-I脊髄症 |
Research Abstract |
ヒドロキシメチルカルボニル(HMC)-ヒドラジド構造を基質遷移状態ミミックとして用いた擬似対称型HIVプロテアーゼ阻害剤のデザインと合成を行った。既知の基質型阻害剤のHMCのα炭素とカルボニル炭素の間にC2回転軸を想定し、回転前の基質型阻害剤と180度回転した後の基質型阻害剤を重ね合わせた。次にそれぞれのP´部位を除去し、HMC-ヒドラジド構造を組み込むことにより擬似対称型阻害剤をデザインした。阻害剤の両末端構造には、分子モデリング計算により架橋水が配置可能であり、変異HIVプロテアーゼに有効と考えられるオキサミド構造を採用した。 合成はベンジルヒドラジンを出発物質としてZ-バリンをペプチド縮合剤により縮合させ、次いでBoc-アロフェニルノルスタチン誘導体を混合酸無水物法により縮合させた。Boc-基を除去し、Z-バリンを縮合させ、両末端のZ-基を除去して中間体を得た後、各種オキサミド誘導体を縮合させ、一連の誘導体を得た。 得られた擬似対称型化合物について、野生型HIV-1プロテアーゼに対する阻害活性を評価したところ、阻害剤50nMで有為な阻害活性を示し、中には90%以上を示す化合物が見られた。更にロピナビル耐性変異を導入した変異プロテアーゼに対する阻害活性を測定したところ、野生型酵素に対してはKNI-272よりも活性が低い化合物が、変異酵素に対してはKNI-272を上回る活性を示すことを見いだした。この活性保持について、阻害剤の両末端に種々のオキサミド構造を導入した誘導体を比較したところ、アミノ基で置換したベンジルオキサミドが有効であることが分かった。 前述の設計手法を用い、擬似対称型HTLV-Iプロテアーゼ阻害剤を設計し、従来の保護基を用いたペプチド縮合法により合成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基質遷移状態概念のヒドロキシルメチルカルボニル(HMC)構造とヒドラジド構造を融合した独自の「HMC-ヒドラジド」を組み込むことで擬似対称型の化合物を設計し、強い阻害活性を示す新規HIVプロテアーゼ阻害剤をいくつか得ることができた。合成した擬似対称型阻害剤の中には薬剤耐性変異を導入した変異プロテアーゼに対して、既存の阻害剤よりも活性が保持できることを見いだした。この結果により、市販のHIVプロテアーゼ阻害剤を用いた長期にわたるHIV感染治療の際に出現した耐性ウイルスの問題を克服できることを示唆している。また、「HMC-ヒドラジド」構造を用いる阻害剤設計手法をHTLV-Iプロテアーゼの阻害剤設計へと応用させ、擬似対称型阻害剤を合成した。これらの擬似対称型化合物のHTLV-Iプロテアーゼ阻害活性を検討することにより、成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-I脊髄症(HAM)の根本的な新規治療薬のシードとなることが期待される。従って、本研究はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
変異HIVプロテアーゼに対して高い阻害活性を示したHMC-ヒドラジド構造に基づく擬似対称型化合物をリード化合物とし、構造最適化を行う。その際には擬似対称型化合物と変異HIVプロテアーゼの複合体の分子モデルを構築し、相互作用解析による情報を考慮して設計を進める。新たに設計した擬似対称型化合物の合成は、これまでに確立した保護基を用いたペプチド縮合法による合成経路により行う。新規化合物のHIVプロテアーゼ阻害活性および薬剤耐性株由来の変異部位を導入したHIVプロテアーゼ変異体を用いて阻害活性を評価し、野生型と変異体の阻害活性の違いを考察することにより、アミノ酸変異に順応できる構造最適化を行う。同様のデザイン手法により合成したHTLV-Iプロテアーゼ阻害剤についてはHTLV-Iプロテアーゼ阻害活性を評価し、結合分子モデルを構築して得られた情報を基に、構造最適化を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)変異HIVプロテアーゼに有効な擬似対称型阻害剤の効率的デザイン:強いHIVプロテアーゼ阻害活性を示した擬似対称型阻害剤について、X線結晶構造にもとづいたHIVプロテアーゼ変異体と阻害剤複合体の分子モデルを構築し、架橋水の配置を含めた分子間相互作用を計算する。架橋水配置部位の最適構造を探索し、架橋水の配置を含めた分子設計を行う。2)擬似対称型阻害剤のHIVプロテアーゼ変異体に対する活性評価:分子モデル構築により設計して合成した擬似対称型化合物について、既存薬耐性を示すHIV株由来のHIVプロテアーゼ変異体を用いた酵素阻害活性を評価し、野生型と変異体の酵素阻害活性を比較する。3)擬似対称型阻害剤とHTLV-Iプロテアーゼの複合体分子モデルによる構造最適化:合成した擬似対称型阻害剤のHTLV-Iプロテアーゼ阻害活性を評価する。基質型阻害剤との複合体のX線結晶構造が得られているので、評価した擬似対称型阻害剤とHTLV-Iプロテアーゼとの結合モデルを構築し、相互作用を計算し、阻害活性向上のための構造最適化を行う。
|
Research Products
(5 results)