2011 Fiscal Year Research-status Report
大気中浮遊粒子状物質の次世代免疫系への影響とそのメカニズム解明に関する研究
Project/Area Number |
23790153
|
Research Institution | Oita University of Nursing and Health Sciences |
Principal Investigator |
吉田 成一 大分県立看護科学大学, 看護学部, 准教授 (40360060)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 浮遊粒子状物質 / 胎仔期曝露 / 遺伝子発現 / Ahレセプター / マウス / 免疫系 |
Research Abstract |
近年、浮遊粒子状物質 (SPM)の胎児期曝露により、低出生体重児のリスクの増加および気管支喘息の罹患率の増加が報告されている。これまでの研究により、SPMを妊娠マウスに曝露すると雄性出生仔の免疫系に影響が生じることが明らかになっている。しかし、SPM曝露が胎仔にどのような作用を示し、出生仔の免疫系に影響を与えているかについては明らかにされていない。そこで、大気中から採取したSPMを妊娠マウスに投与し、SPMが胎仔の遺伝子発現に与える影響を検討し、出生仔で生じた影響の解明を試みた。 ICR系妊娠マウス20匹を用いた。SPM群と対照群に分け、1群10匹とし、SPM群には、SPM (200μg/匹)を妊娠7日目、13日目に気管内投与した。妊娠14日目に胎仔を摘出し、性別判断を行った。1母体あたり雄性胎仔3匹を無作為に抽出し、雄性胎仔のtotal RNAを抽出した後、cDNAを合成した。合成したcDNAを用いて雄性胎仔の遺伝子発現解析を行った。 SPM曝露による胎仔への影響を検討するため、遺伝子発現解析を行ったところ、45遺伝子中7遺伝子に変動が認められた。最も発現変動が大きかった遺伝子は、免疫系や異物を代謝する酵素誘導に関与するタンパク質の一つである芳香族炭化水素受容体 (AhR) mRNAであり、SPM群は対照群の約33%に減少した。また、芳香族炭化水素受容体制御因子 (AhRR) mRNAは28.7%増加した。AhRRはAhRの発現を抑制することから、AhRR mRNAの発現量の増加がAhR mRNA発現抑制に関与している可能性が考えられる。その他、発現に変動が認められた遺伝子は、性分化、ステロイド合成などに関与する遺伝子であった。以上のことより、胎仔期のSPM曝露が、胎仔の様々な遺伝子発現を変動させ、出生仔の免疫系などに影響を与える起因となっている可能性が考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書当初の予定通り、浮遊粒子状物質胎仔期曝露により、免疫系に関係する因子に変動が認められている。また、平成24年度に計画している粒子状物質もすでに入手済みであり、これは平成23年度に用いた粒子状物質と異なる性状のものであるため、両者を比較することで、影響因子のマーカーとして有用であるか否か判断することが可能となり、当初計画通り着実に研究が進行していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に採取した粒子状物質を用い、動物実験を平成24年度上半期に行う。その後、得られた知見を平成23年度の知見と比較し、胎仔の免疫系関連因子への影響を評価し、バイオマーカーの同定と出生仔免疫系の増悪要因の解明を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、消耗品費として使用するとともに、得られた知見を学会で発表するための旅費等で使用する。さらに、英文専門誌への投稿費として使用する。 平成23年度は、人件費を使用せず、また、試薬・消耗品もより安価に購入できる業者選定を行ったことなどより、使用予定の研究を減額することができた。ただし、平成23年度に使用した予算額は予定より下回ったが研究進捗状況には全く影響が生じず、平成24年度により充実した予算計画を立てることができることから、研究全体では計画以上の研究推進ができると想定している。
|