2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23790157
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
廣岡 孝志 東京理科大学, 薬学部, 助教 (50397519)
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Keywords | メチル水銀 / 浮腫仮説 / 細胞性浮腫 / ポリオール経路 / アルドース還元酵素 / ソルビトール脱水素酵素 / MAPK経路 / Nrf2経路 |
Research Abstract |
メチル水銀中毒(水俣病)における大脳皮質の深い脳溝周辺組織への選択的な障害は,浮腫による組織の循環障害に起因する。浮腫は,血管透過性異常による血管性と細胞膨張による細胞性に分類される。細胞性浮腫の形成に糖代謝経路であるポリオール経路の関与が知られている。本経路では,アルドース還元酵素(AR)によりグルコースから変換されたソルビトールが,ソルビトール脱水素酵素(SDH)によりフルクトースに変換される。ARの活性上昇とSDHの活性低下によるソルビトール蓄積は細胞膨張を誘発する。申請者らは,メチル水銀がヒト脳微小血管周皮細胞に浮腫性と推察される形態学的変化を誘発することを見いだしている。本研究の目的は,メチル水銀による細胞性浮腫形成におけるARとSDHの関与とその分子機構を明らかにすることである。 前年度の研究では,メチル水銀がAR発現上昇とSDH発現低下により周皮細胞のソルビトール蓄積量を増加させ浮腫性変化を引き起こす可能性を明らかにした。本年度は,まず,周皮細胞のARとSDHの酵素活性に対するメチル水銀の作用を検討した。その結果,メチル水銀はARの活性を増加させたが,SDHの活性は変化させなかった。次にメチル水銀のARの発現誘導におけるMAPK経路とNrf2経路の関与を検討した。MAPK経路では,メチル水銀によるp38MAPKのリン酸化レベルの上昇が確認された。さらにp38MAPK阻害剤はメチル水銀のAR発現誘導を抑制した。また,メチル水銀はNrf2を活性化し,Nrf2ノックダウン処理はメチル水銀によるAR発現誘導を抑制した。以上の結果は,アルドース還元酵素がヒト脳微小血管周皮細胞におけるメチル水銀毒性発現の標的分子の1つであり,p38MAPK経路およびNrf2経路を介したアルドース還元酵素の活性化がメチル水銀の細胞性浮腫形成の分子基盤である可能性を示唆している。
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