2011 Fiscal Year Research-status Report
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23790158
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
和田 平 日本大学, 薬学部, 助教 (20597398)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | AhR / メタボリックシンドローム |
Research Abstract |
本研究では、肝臓AhRによる脂肪組織からのレプチン分泌量の制御を通じた全身エネルギー代謝調節メカニズムを脂肪細胞ならびに視床下部とのクロストークの観点から明らかにする目的で当該年度に以下のことを明らかにした。(1)肝AhRによるレプチン発現・分泌調節の新たなメカニズム肝臓特異的なAhR遺伝子の欠損により、脂肪組織由来のホルモンであるレプチン量の増加の分子メカニズムとして、肝臓のAhRに制御を受ける液性因子の存在が推察される。そこで肝臓特異的AhR欠損(L-AhR KO)マウスおよびコントロールマウスの血清を3T3-L1成熟脂肪細胞にそれぞれ処理し、脂肪細胞におけるレプチン量への影響を検討した。その結果、L-AhR KO由来の血清刺激により、3T3-L1成熟脂肪細胞におけるレプチン発現量は増加を示した。このことは、肝AhRは液性因子を介して脂肪組織のレプチン量の制御に関与していることが明らかとなった。(2) L-AhR KO マウスの視床下部におけるレプチン作用の亢進レプチンは視床下部においてレプチン受容体に結合し、その下流に存在するSTAT3のリン酸化を介して摂食制御を行っている。そこで、L-AhR KO マウスにおける食餌摂取量の低下と視床下部におけるレプチン作用の関連性を明らかにするため、STAT3の活性化を検討した。その結果、コントロールマウスに比較してL-AhR KO マウスにおけるSTAT3のリン酸化が著しく増加していることが明らかになった。その一方、両群間におけるtotal STAT3発現量に優位な差は認められなかった。すなわち、L-AhR KO マウスにおける血中レプチン量の増加は、視床下部においてレプチン作用の亢進を介して摂食量の減少を引き起こすことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、AhRによる肝臓での糖・脂質代謝調節機構も解明を通じてダイオキシン類の毒性発現メカニズムならびにメタボリックシンドローム発症メカニズムを明らかにすることを目的としている。当該年度の研究により(1)肝AhRが液性因子の制御調節を介した脂肪組織におけるレプチン発現・分泌調節を司っていること。(2) L-AhR KO マウスにおける食餌摂取量の低下と視床下部におけるレプチン作用の亢進が密接に関与していることを明らかにした。また、肝AhRに制御を受ける液性因子の同定および視床下部におけるSTAT3の下流に存在するレプチンシグナル関連因子についての更なる詳細についても検討を行っている。これらの研究成果を基に、L-AhR KO マウスにおける肝臓および骨格筋におけるレプチン作用、さらにはレプチン欠損マウスを用いてL-AhR KO マウスにおけるエネルギー代謝調節におけるレプチン作用の影響を次年度以降検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究より、L-AhR KOマウスの視床下部におけるレプチン作用の増強を明らかにした。レプチンは視床下部のみならず、骨格筋および肝臓においてAMPKの活性化を介して糖脂質代謝制御を行っている。そこでL-AhR KOマウスにおけるレプチン作用の増強と肝臓および骨格筋におけるAMPK活性化作用とそのシグナリング経路について検討する。 また、L-AhR KOマウスにおいて観察された体重増加の摂食量の減少、エネルギー消費量の増加およびインスリン感受性の亢進は、増加した血中レプチン量の影響であると考えられる。そこで、L-AhR KOマウスをレプチンを欠くOb/Obマウス(遺伝性糖尿病モデルマウス)と交配させることによりレプチン作用が消失したL-AhR KOマウスを作成し、肝AhRによる糖脂質代謝制御へのレプチン作用の重要性を検討する。 さらに、AhRはTCDDおよび3-MCなどのリガンド依存型転写因子であることから、AhRの活性化が及ぼすレプチン発現・分泌調節および全身性のエネルギー代謝におけるレプチン作用への影響を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究計画として以下の項目を予定している。(1)L-AhR KOマウスにおけるレプチン作用の増強とAMPK活性化作用との関連性を検討する。(2)レプチン欠損マウス(Ob/Ob)における肝臓AhRの機能解析。これらの研究計画の中でL-AhR KOマウスにおけるAMPKならびにインスリンシグナリング経路の解析を含んでいるため、抗体試薬の購入費を遺伝子工学実験試薬および分子生物学的実験試薬とは別途で予算として計画している。また、レプチンを欠くL-AhR KOマウスの血液パラメーター解析のための費用として血液生化学的試薬の購入を予定している。これらの実験を遂行ためのマウスの動物用飼料ならびに施設利用料に当てる予定である。平成24年度の研究成果を第34回日本分子生物学会(福岡)および日本薬学 会第132年会(横浜)で発表するための旅費を予算として使用する予定である。以上を踏まえて当該年度の残金31万円と次年度の交付額100万円を併せた直接経費131万円を物品費(110万円)、旅費(21万円)、人件費・敷金(0円)、その他(0円)の用途での使用を計画している。
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Research Products
(9 results)